映画「秋の理由」/イベントレポート
・2016.11.04 イベントレポート1 明智惠子さん・福間健二監督
甲府 シアターセントラルBe館初日舞台挨拶
甲府、シアターセントラルBe館での『秋の理由』上映は、1月28日(土)から始まりました。一週目は、10時40分からと14時40分からの二回上映で、1月31日(火)は休館日です。特別に10時20分からの開始となった初日一回目の上映後に、福間健二監督による舞台挨拶が行なわれました。

シアターセントラルBe館は、長い歴史をもつ中央興業の経営する、甲府では老舗の映画館です。甲府駅まで迎えに来てくれた中央興業社長の小野 樹(よしき)さんは、なんと!福間監督が特別に深い愛着をもつ監督である故増村保造監督の甥だと知って、福間監督はびっくり。小野さんの目に映った増村監督の興味深いエピソード、そして映画界の変遷の話に、興味津々の表情で聞き入っていました。
甲府 シアターセントラルBe館初日舞台挨拶
舞台挨拶では、福間監督は「詩人で大学教授だった人間が映画を撮るようになったと言われることが多いですが、ぼくは高校生のときに映画をやろうと決めていました」と、8ミリ作品、16ミリ作品を撮り、若松プロに出入りしていた学生時代の思い出から語りはじめました。映画への情熱、それをあらためて確かめていく話しぶりでした。

人生の紆余曲折を経て、現在、デジタル時代になって低予算での製作が可能になり、撮影鈴木一博、録音・音響小川武、編集秦岳志というすばらしいスタッフにも恵まれて、映画を作りつづけている。「それによって、こうして皆さんにもお会いできるんですが、でも、ぼくのような作り方の作品で、映画館まで足を運んでもらうのは、大変なこと。皆さんがどういう人たちなのか、ひとりひとりにお尋ねしたいくらいの気持ちがあります」。

「どうか、まわりの方、お知り合いの方に、この『秋の理由』のこと、宣伝してください」と締めくくった福間監督。どうやら、女性の多い客席にご機嫌だったようです。舞台挨拶のあと、ロビーでの「すばらしいスタッフと言われていましたが、その通りですね」「よかったです」「匂いがしましたよ」といった声に、うれしそうに耳を傾けていました。
甲府 シアターセントラルBe館初日舞台挨拶
来てくださった皆さん、そして小野さんはじめスタッフの皆さん、ほんとうにありがとうございました。
シアターセントラルBe館での『秋の理由』上映は2月10日(金)まで続きます。
どうぞ、よろしく!
シネマテークたかさき 初日舞台挨拶&朗読
あたらしい年になりました。2017年最初に上映スタートするのは、群馬県高崎市のシネマテークたかさきです。シネマテークたかさきでは、2010年の第24回高崎映画祭で『岡山の娘』を上映していただいて以降、『わたしたちの夏』『あるいは佐々木ユキ』そしてこのたびの『秋の理由』と、福間監督作品をずっと上映してきてもらっています。
群馬県は、萩原朔太郎を筆頭に、詩人が生まれ今も詩人が育つ土地で、福間健二は2011年に萩原朔太郎賞を受賞したこともきっかけとなって、群馬県とのつながりが深まりました。同時に、映画を精力的につくりつづけていることが、シネマテークたかさきによって支えられ、さらに群馬県との濃い縁ができています。いまや福間監督にとって高崎や前橋は、「表現における心のふるさと」のようなところになっています。

そのシネマテークたかさきでの『秋の理由』初日の1月14日(土)は、全国で大雪の警報が出されてこの冬一番の冷え込みとなりました。群馬県北部には雪の予報も出ています。万が一列車が遅れてはたいへんと、福間監督は予定を早めて早朝から高崎に向かいました。高崎線が埼玉県をこえて群馬県に入ると、遠くの山々には厚い雲がかかってきましたが、幸いにも定刻どおりに到着。ひと休みしてからシネマテークたかさきに向かいました。いつものようにスタッフの皆さんがあたたかく迎えてくれます。そして、『あるいは佐々木ユキ』以来3年ぶりの、支配人の小林栄子さんと高崎映画祭ディレクターの志尾睦子さんとの再会。シネマテークたかさきは、2004年にここを立ち上げた、いまは亡き茂木正男さんの時代から、志尾さんはじめ女性たちが中心となって運営してきている劇場です。群馬県は「かかあ殿下とからっ風」。肝のすわった懐の深い女性たちの、心意気とこまやかな気配りがすみずみに生きているすばらしい映画館です!
シネマテークたかさき 初日舞台挨拶&朗読
大好きなシネマテークたかさきゆえ、ついつい前置きが長くなりました。
さて12時、映画は終映して福間監督が舞台に登場。小林栄子さんがお相手を務めてくださいます。
まずは「こんな寒い日にもかかわらず、大勢の方に観に来てもらえてとてもうれしいです。ありがとうございます」と福間監督があいさつ。
小林さんが質問します。「監督であり詩人である福間さんは、今回ご自身の詩集を原作とされていますが、なぜ詩を映画にする『秋の理由』だったのでしょうか」。
福間監督「実はあまり考えていないんですよ。僕はタイトルを先に決めるタイプで、秋に撮影するから詩集『秋の理由』のタイトルを使おうぐらいのものでした。共同脚本の高田亮さんに詩集を渡してここから言葉を使ってとお願いした。ところが使ってくれないので、僕の方がちょっとムキになって使って、ならば『原作ということにしよう』となった。自分の持っているもの、つまり詩を使わないで映画らしくやろうというのは、僕にはできない。自分の持ってるものは全部使うんですね。詩を書くのはひとりで、その孤独に耐えなければならないし、自分から逃げられない。でも映画は人と一緒にやる楽しさに向かっていく。ある意味で自分はいらないところもあって、それぞれが一番いいものを出してくれればそれでいいと思う」。
小林さん「今回は寺島さんや佐野さんらが出演されていて、福間映画の中では豪華キャストですよね。福間監督の世界のための演出はどのようにされたのですか?」
福間監督「佐野さんとはつきあいは古いけれど、ここまでどこかすれ違うものがあった。でも20年たって、そういう人こそが一緒にやりたい人だと思った。佐野さんがOKくれて『声の出ない作家』が決まって、彼には今までの僕の世界を思い切り壊してくれと頼んだんです。寺島さんは白紙で入る人で、出たとこ一発勝負のような感じ。寺島さんは他の作品では肉厚というイメージがあるんだけど、会ってみたらとてもスマートな人だった。それが出てくれればいいと思って、衣装はグレーとか地味なものにして、そのかたちを大事にして、彼女のすごい集中力が生きるように考えた。あのケンカのところは、佐野さんも怖がっていたと思う」。
シネマテークたかさき 初日舞台挨拶&朗読
小林さん「寺島さんはいるだけで存在感が大きい人だけど、この映画の中ではスクリーンにとけこんでいますよね。あと、色彩がすごくきれいですが、これは秋ということもふくめてねらったのですか」。
福間監督「撮影の鈴木一博さんとは3回目で、カメラもずっとキャノンの5Dを使ってる。あの小さな5D使って日本であれだけ映せる人は他にいないと思う。でもあのカメラの利点は『佐々木ユキ』でやりきった。じゃあ今回はヨーロッパ映画のようにやろう、きれいだけでなく重たさが出るようにやろうと考えた。一博さんはフィルムで撮った感じが大事な人だけど、僕はデジタルなりのいい画質を狙えばいいと思う。いつも対立するところもあるけど、気がついたんですね。色をねらうと色が出ないけど、黒をはっきりさせることで色を生かせるんだと。たとえば佐野さんが首にロープをまくところ、あそこで黒をしっかり黒にした。それがほかのところの色に影響を与えていると思う」。
小林さん「なるほど。地面や空などの風景が入るところに、言葉以上に情感が出ていると思いました。あれはすごくよかったです」。
福間監督「地面のことはよく言われますが、一博さんが、空はあまり表情がないけど地面は豊かだと言って、たんねんに撮ってくれたんです」。

あっという間に15分間はすぎて、残りの15分、福間監督は詩集『秋の理由』から4篇の詩を朗読しました。

・「脱出」
寺島しのぶさん演じる美咲が、宮本に告げる別れの言葉の中に出てくる一節をふくむ詩。
「これからは/だれのこともそんなに好きになれない」
「これからは/だれに対してもそんなによくしてやれない」
・「ミスキャスト」
冒頭、街の中を歩く伊藤洋三郎さん演じる宮本の心の中の言葉の一節をふくむ詩。
「まちを歩く
 たくさんの人とすれちがう
 だれも「たすけてくれ」とはいわないが
 ぼくも「苦しいか」とはきかないが」
・「誘惑」
趣里さん演じるミクが、難民のような人たちの中から立ち上がって言う一節をふくむ詩。
「きみはぼくと同じことを心配しているが
 けっしてそれを口にはしないだろう」
・「秋の理由」
タイトルとなったこの作品からは、何か所か使われていますが、今日の朗読は短縮版に即興も加えて読まれました。
「ゆるされたと思うのは錯覚だが
 この世界はいい匂いがする
 自分の力でわかったことも少しはある
 旅をして
 長い列のうしろに並んで
 キンモクセイの坂道の下
 わたしは
 顔や手に粘りつく暗示を洗いおとして
 だれかが泣いているために
 秋が来たわけではないことを知った」

こうして書き取ってみると、映画の場面が浮かんできますね。
盛況の場内で熱心なお客さんを前に、福間監督は気合十分でした。これまで培ってきた朗読のよさを十分発揮できたと思います。

朗読を終えて、大きな拍手をいただいて、初日は無事終了しました。
福間監督は、パンフレットを買ってくださる方や感想を伝えてくださる方と、時間が許すまで歓談しました。
寒波の中をいらしてくださった皆さん、ほんとうにありがとうございました。
そして、シネマテークたかさきの小林さん、志尾さん、スタッフの皆さん、たいへんお世話になりました。これからも映画をつくり続けていきます。

シネマテークたかさきでは、20日金曜日まで連日10時30分より上映が続きます。
ただし、17日火曜日は休館ですので、どうぞご注意ください。
『秋の理由』を気に入ってくださったら、ぜひまわりの方に声をかけてください!

宣伝スタッフ カツ丼娘
神戸・大阪・京都 初日舞台挨拶
お待たせしました! 12月17日(土)、ついに『秋の理由』が関西にやってきました。神戸の元町映画館、大阪の第七藝術劇場、京都の京都みなみ会館の、三つの劇場で同時公開です。各館で上映後、福間健二監督の舞台挨拶が行なわれました。

この日、朝4時半に起きたという福間監督、9時半すぎには新大阪駅に到着。余裕があったので、新大阪駅を徹底観察したそうです。在来線側の、ブックストア、待合室、セブンイレブンなどがオープンスペースでつながっているのがいい感じとのこと。そこで腹ごしらえもして、JR神戸線で元町駅へ。大震災の直後、神戸大学で集中講義をして毎晩神戸を飲み歩いたときの記憶がよみがえったそうです。

11時、元町駅で待ち合わせていたtough mamaの神戸宣伝部長の勝田ホケ太さんと、にぎやかな元町商店街にある元町映画館へ。その立地も、一階がシアター、二階が談話スペースという構造も、全体のデザインも、支配人林未来(みらい)さんの人柄も、監督はすっかり気に入ったようです。林さんに「趣里ちゃんのミクと漢字は同じだね」。小林良二プロデューサーも合流して、舞台挨拶の時間となりました。
舞台挨拶の模様は、元町映画館のホームページにアップされています。
http://motoei.com/event/event201612.html#12182
上映後は、談話室でのサイン会と写真撮影が予定時間ギリギリまでおこなわれました。
元町映画館
神戸からの移動は、阪急電車。花隈駅から十三駅へ、一本で。13時すぎに第七藝術劇場に到着。ここでは『岡山の娘』『わたしたちの夏』『あるいは佐々木ユキ』と連続して福間作品を上映してもらっています。「十三、大好き。十三で飲みたいとしょっちゅう思ってる」という福間監督を、松村厚支配人、スタッフのみなさんがあたたかく迎えてくれました。
お昼(「上等カレー」のカツカレー!)を食べに出て戻ると、『秋の理由』関西宣伝を統括している「オフィス風まかせ」の松井寛子さん、大阪在住の編集の秦岳志さんも来ていて、ロビーはにぎやかです。

舞台挨拶には、秦さんも登場。おなじみの松村支配人の司会で、福間監督はすっかりリラックスしていました。
秦さんが、福間監督との出会いから語りはじめ、「福間監督の映画は、新鮮です。わかってそうしているのか、そうじゃないのか、ショットのつながりがまったく普通ではない。いつもどう編集していいか迷うんだけど、それが楽しい」と言うと、福間監督は「大島渚に習ったことだけど、編集者がどうつないでいいかわからないように撮るくらいがいいと思ってます。秦くんはすごいです! カメラの鈴木一博、録音・音響の小川武、そして編集の秦くん、いまの日本映画ではこれ以上ないという最強のスタッフと仕事してるんです」。

秋をしっかりと撮れたこと、作家の話をやることになったところから佐野和宏さんが不可欠の存在だったこと、趣里さんが天才的で詩を直観的につかんでくれたことなどを、福間監督はノリよく語って、「なんで映画を撮っているのかというと、
書くのはひとりで自分を追いつめて追いつめて書くんだけど、みんなと集団でつくる映画は自分ひとりが追いつめられるんじゃない、それがすごくいいんです」とも。
舞台挨拶のあとは、シアター前のエレベーターホールでサイン会と写真撮影。懐かしい人たちとの再会もあり、とても楽しい雰囲気でした。
第七藝術劇場
十三からは、阪急で梅田(大阪駅)に出て、そこからJRで京都駅、さらに近鉄で京都みなみ会館のある東寺へというコース。劇場には15時半すぎに到着しました。京都みなみ会館も、「ふしぎな感じ。古さと新しさが独特に合わさってる」と福間監督はとても気に入った様子で、壁やドアにある監督たちのサインや、舞台挨拶までの時間を待っていた倉庫兼事務所の、監督別に分けて棚に積まれたポスターなどに見入っていました。

舞台挨拶は、館長の吉田有里香さんと。まず、「60代に10本撮ると言ってきたけど、まだ3本目。あと7本撮るまで僕の60代は終わらない。それと同じヘリクツで『秋の理由』が上映されているあいだは秋が続いている、と考えることにしました」。吉田さんは、共同脚本の高田亮さんとどんなふうに仕事をしたのか、今回のすばらしいキャスティングはどう進められたのかなどを尋ねたあと、村岡役の佐野和宏ファンと順一役の木村文洋ファンが客席にいることを意識した、村岡と順一の場面についての質問へと向かいます。

そうなのです。二十年前に、この京都で、佐野チンと木村ブンちゃんは実際に出会い、映画の中に出てくるような「師と弟子」の場面を持ったのです。それがおこった場所、四条木屋町の「JAZZ IN ろくでなし」のマスター、ヨコちゃん(横田直寿さん)も客席でうなずいていました。
舞台挨拶後は、ロビーでのサイン会と写真撮影。福間監督は、そのヨコちゃんをはじめとして、思いがけなく昔からの縁のある人たち、自分を応援してくれてきた人たち、プロデューサーの中西佳代子さん、高村而葉さんや岡本啓さんら詩人たちに次々に出会って、すっかり興奮気味でした。
京都みなみ会館
大阪でも、京都でも、福間監督は完全に関西ノリになっているのか、「『秋の理由』の250カット、一カットごとに画と音、心を込めて作っています。なにか感じとってもらえたなら、どうぞ、周囲の人たちにすすめるなんて生やさしいことじゃなく、観るように仕向けてください!」と頭を下げていたのが、印象的でした。

近鉄の東寺駅近くの「時代屋」で、京都のみなさんと「軽くやりましょう」という飲み会がはじまったのは、17時ごろ。当然、盛り上がってしまい、19時スタートの、十三、松井寛子さんのお店「風まかせ」での打ち上げには、福間監督一行は大遅刻となりました。

元町映画館、第七藝術劇場、京都みなみ会館にいらしてくださった皆さん、そしてそれぞれの劇場スタッフの皆さん、ほんとうにありがとうございました。
関西の上映は次のように続きます。みなさん、観てください。観た人は(遠くにいる人たちも)、どうぞまわりの人たち、関西の人たちが観にくるように仕向けてください!


【神戸 元町映画館】
12月23日(金・祝)まで 10:30

【大阪 第七藝術劇場】(3週上映)
12月23日(金・祝)まで 12:20
12月24日(土)~30日(金)14:45
12月31日(土)~1月6日(金)16:35 ★1月1日(元日)は休館

【京都 京都みなみ会館】
12月23日(金・祝)まで 10:30
横浜 シネマジャック&ベティ上映前の朗読
12月14日(水)、横浜 シネマジャック&ベティは女性サービスデー。18時25分からの上映前に、福間健二監督による、詩集『秋の理由』のなかの詩の朗読が行なわれました。
冬の到来を思わせる寒い日でしたが、駆けつけてくれた熱心な観客の皆さんを前に、福間監督は気合が入っていました。
まず、あいさつのあとに「冬っぽくなってきましたが、ヘリクツを考えるのが得意な僕としては、『秋の理由』が上映されているあいだは、秋は終わらないと考えています」と切り出しました。

さらに、「僕の映画には詩が出てきます。映画と詩、どうなってるのかとよく聞かれます。しかし、映画が言葉を持って以来、つまり、サイレント映画の時代からそうなのですが、映画に詩がない方がおかしい。いい映画は、かならず詩を含んでいます」と持論を展開。声を失った作家村岡が登場する『秋の理由』で、どんなふうに人間の言葉と声について考えさせられたかなどを話しました。
横浜 シネマジャック&ベティ上映前の朗読
この日の朗読は、まず、長めの作品「脱出」から。
映画の後半で、宮本への美咲の手紙として出てくるフレーズがここから取られています。
「これからは/だれのこともそんなに好きになれない」
「これからは/だれに対してもそんなによくしてやれない」

つづいて、二つの短い作品、「ミスキャスト」と「誘惑」のあと、この日の朗読のために特別に編集したという「秋の理由〜ぼくはまだ黒い芯をたかぶらせている」が読まれました。ボブ・ディランが最大のライヴァルだと思って詩を書いてきたという福間監督の朗読、独特のノリがあって、やっぱりいいです。

「うっとりと聴き入った」という感想も、上映後のロビーで聞かれました。
ほんとうに寒い夜でした。でも、福間監督の声は熱く響きました。来ていただいた皆さん、ありがとうございました。

ジャック&ベティの『秋の理由』は、12月16日(金)までです。
どうぞ、よろしく!
鹿児島 ガーデンズシネマ舞台挨拶&トーク
『秋の理由』は、鹿児島ガーデンズシネマにて12月10日(土)、11日(日)の2日間、4回の上映が行なわれました。ガーデンズシネマでは、『わたしたちの夏』『あるいは佐々木ユキ』につづいての福間監督作品の上映です。鹿児島は、福間監督にとって親しい友人とそのまた友人との深いつながりがあって、これまでも何度も訪れている特別な土地です。前日の9日からはりきって鹿児島入りした福間監督は、まずガーデンズシネマへ。入口脇には『秋の理由』ポスターとその下には紅葉した落ち葉が置かれて、監督を待ってくれていました。そして3年ぶりの再会の、代表の黒岩美智子さんとスタッフの鮎川さんがあたたかく迎えてくださいました。

さて翌10日(土)です。どこにいても朝の散歩は欠かさない福間監督は、ホテル近くの照国神社へ。今日はめずらしくお賽銭をあげて、お辞儀も深々と。
そのおかげあってか、14時40分からの初回上映は満席! 19時30分からの回もほぼ満席。監督は上機嫌で上映後の2回のトークにのぞみました。トークのお相手はどちらの回も、鹿児島県は鹿屋市出身の詩人小山伸二さん。小山さんは国立市在住ですが、ちょうど鹿児島に仕事で出張中のところをお願いしたというわけです。今日で4回目の『秋の理由』を観た小山さん、鋭い見解を示してくれました。
鹿児島 ガーデンズシネマ舞台挨拶&トーク
観れば観るほど、まだまだ発見するところがあった。国立に長く住み詩を書いている自分にとって、作品の中に作品として入っていけないところがあったけれど、今日は一個の作品として観ることができたとのこと。詩人で映画監督の福間さんのなかでは、詩と映画というちがうジャンルが融合している面もあるけれど、つまり映画なんだと確信した。映像、音、言葉、そして沈黙、それらが融合している。詩は自分の中だけでつくりだすけれど、映画はひとりではつくれない。

その上で、こばやし食堂の料理やサランラップのシーンは、重要なモチーフだと小山さんは言います。日常の家事から逸脱している表現者と家事などの実践労働者の構図。つまり、現代詩の難しいことと日常のリアルなものをあわせて、立体的な奥行きを出している。さらに、芸術的な映画をつくる人は食べることに関心がないように思えるけど、福間さんはヨーロッパ(ラテン系)の人たちみたいに何のために生きるか、食べるためだ、これが過去作品含めしっかり出ている。それこそが福間さんの映画だと思う。
また、福間さんが詩を書く姿勢は「すべて計算してではなく、書きたいことがなくても書く」。同じように映画に対しても「映画はこうあるべきである」ではない。その姿勢が、今回キャストやスタッフに恵まれたことも重なって、うまく出たと思う。
それでもわかりにくいところはあるかもしれないから、1回ではなく2回、3回と観てもらいたいです。
これに対して福間監督も、「ぼくもわからないところありなんですよね」などと言うものだから、場内は大爆笑です。

福間監督はこの日の午前中に、かごしま近代文学館で開催中の「向田邦子の目」という企画展に行ってきました。『秋の理由』の男二人に女ひとりという組み合わせを、向田邦子の「あ・うん」から考えたのです。しかしそれだと普通のドラマなので、そこに若い女性を登場させた。これが福間監督ならではで、「ミクが中心にならないと、僕の映画にならない」と福間監督。小山さんもまた「ミクの存在が初めはよくつかめなかったけれど、夢と現実の交感する存在としてこの映画に不可欠だった。もし天使がいるなら、あんな風に存在する。そのミクを趣里ちゃんが演じきった」と言います。
それにしてもかごしま文学館は、鹿児島に縁の深い作家たちの展示の内容もレイアウトも、とてもすばらしいところです。
鹿児島 ガーデンズシネマ舞台挨拶&トーク
11日(日)の2回の上映もたくさんの方がいらしてくれました。今日は代表の黒岩美智子さんと福間監督が登壇しました。
黒岩さんは、「ここまで3本の福間監督作品を上映してきて、『秋の理由』もまた好きな作品です」と始まりました。タイトルのこと、キャスティングのこと、地面を撮っていること、言葉のこと、ロケ地のこと、詩を書くことと映画を撮ることなどについて、監督の意見を誘導していきました。そのなかで、福間監督がこれまであまり語らなかったことについて記しておきます。

詩人たちは言葉をそぎ落として詩を書いているけど、僕にはそれが苦しい。僕は他の詩人たちが捨てる言葉や、世の中にころがっている言葉をひろって組み立てる。そして詩を書くように映画をつくる、映画をつくるように詩を書く、そうすることで、苦しまないで表現する、と思えるようになった。けれども映画は、編集に入るとすごく落ち込む。でも編集の秦くんや、音の小川さんや、音楽の清岡くんが助けてくれる。人とやってることの幸せを感じる。奇跡のように出来上がるんですよね。

男性の詩人の方からの感想です。
詩人はほんとうは書きたい。でもその場にいると逃げたくなる。書きたいと書きたくないのはざまに、いつもいる。福間さんの映画にも詩にも、物語と非物語、言葉と非言葉が存在している。うまく説明できない詩というもの、それを映像でちゃんと表現してくれていると思う。とてもよかったです。

4回のトークは、どの回もほとんどの方が参加して、あたたかく熱心に聞きいる空気に満ちていました。
福間監督は最後にあいさつしました。
「鹿児島で上映してもらえると必ず来ますが、そこでいろんな人と出会う。そのことがまた次へと結んでくれる。ある種の詩人はどこか人間嫌いですが、僕は出会うことが好きです。鹿児島で出会えたすべてのことを大切にして、また必ず来ます。またお会いしましょう。ほんとうにありがとうございました」。
大きな拍手をいただいて、鹿児島の上映は終了しました。
いらしてくださったすべての皆さん、ガーデンズシネマの黒岩さん、鮎川さん、寺師さん、そしてこの劇場を支える皆さんに、心から感謝いたします。

上映が終わってから、知人の言ってくれた言葉が心に残りました。
「映画だけでなく、監督本人が南の果ての鹿児島まで来てくれることは、みんなすごくうれしいことなんです。だからお話は興味津々で、聞き逃さないぞぐらいの気持ちで来てると思う」。

打ち上げはもちろん、われらが「吉次郎」。愉しい話もおいしいお酒も、深夜までつづきました。

宣伝スタッフ せごどん
仙台 桜井薬局セントラルホール舞台挨拶
仙台、桜井薬局セントラルホールでの『秋の理由』上映は、11月28日(月)から始まりました。連日、12時50分からの一回上映です。12月4日(日)の上映後に、福間健二監督と、監督助手をつとめた仙台出身の岩間花示丸くんによる舞台挨拶が行なわれました。

福間監督と花示丸くん(撮影中、みんなにそう呼ばれて、大活躍だったそうです)は、仙台駅に着くとまず、去年の12月に開通した地下鉄東西線に乗って、大町西公園駅へ。『わたしたちの夏』と『あるいは佐々木ユキ』の上映会をしてもらった青葉区大手町のギャラリー「TURNAROUND」を訪ねるためです。
「TURNAROUND」では、いま、「漂う遊殺」と題した美術家高山登さんの作品展が開催中。一室全体を占める、枕木を使った巨大な作品「漂う」に福間監督はとても心を揺さぶられたようです。(高山登展「漂う遊殺」は12月17日(土)まで。月曜休廊、入場無料)

青葉区中央にある桜井薬局セントラルホールは、仙台では「セントラル劇場」として知られてきた由緒ある映画館。福間監督は、すっかり気に入ったようです。迎えてくれた小野寺勉代表は、福間監督と親しい常本琢昭監督の友人だそうで、さっそくロビーで話が弾みました。ロビーの壁には福間監督のよく知る映画人のサインがならんでいました。福間監督もトイレの入口の上の壁にサインをしました。小野寺さんと話しながら、『石井輝男映画魂』や『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』といった本を作ったときのことや、福間監督がここまで関わってきた映画界をめぐる記憶が次々によみがえってきたそうです。
仙台 桜井薬局セントラルホール舞台挨拶
舞台挨拶では、花示丸くんが撮影中の愉快なエピソードを紹介。ラストの川べりの宮本と村岡のシーンで、村岡が川に投げた石の音がして、彼が来たことに宮本が気づくというのは、佐野和宏さんのアイディアだったのです。「とくに佐野和宏と寺島さんがアイディアを出してくれた。役者さんのアイディアに監督が負ける。ときには悔しいけれど、そうなる方がいいんです。どうぞ、福間ワールドを壊してください、と言っていたくらいです」と福間監督。
村岡と美咲のケンカのシーンでは、「監督がカットをかけるのを忘れたのかと思うほどでした」と花示丸くん。ようやくカットとなったとき、福間監督は完全に興奮していて「佐野ちん、ありがとう!」と佐野和宏さんに手を差しだしたそうです。そのほかの場面でも、演技は一回勝負と考えている福間監督。一回の本番テイクで次々にショットが決まっていったことを、花示丸くんが臨場感たっぷりに語りました。
最後に福間監督は「夢と現実をひとつにするのが映画。これを見て、自分の生きる現実を少しでもふくらませてもらったらうれしいです」とにこやかに語りました。
仙台 桜井薬局セントラルホール舞台挨拶
予定時間をオーバーして挨拶+トークが終わったあとも、プログラムにサインを求める観客のみなさんとの交流が続きました。福間監督の敬愛する仙台の詩人秋亜綺羅さんをはじめ、花示丸くんのご家族、札幌や山形から駆けつけてくれた方たちまでいて、再会と新しい出会いのよろこびが、ロビーにあふれました。来ていただいたみなさん、桜井薬局セントラルホールの小野寺代表とスタッフの方々、ありがとうございました! 

桜井薬局セントラルホールでの上映は12月9日(金)まで続きます。
どうぞ、よろしく!
横浜 シネマジャック&ベティ初日舞台挨拶
12月3日(土)、『秋の理由』横浜シネマジャック&ベティの初日、15時30分からの上映後、宮本役の伊藤洋三郎さんと福間健二監督の舞台あいさつが行なわれました。
ジャック&ベティでは、2008年の『岡山の娘』以降の福間作品を、ずっと上映してもらってきました。支配人の梶原さんともすっかりおなじみの福間監督、新作のたびにここに来れることを楽しみにしています。そういえば、1年前のちょうどいまごろは、沖島勲監督の追悼特集のトークで来ましたね。
さて今日は、伊藤洋三郎さんもお客さんとともに『秋の理由』を観てから、舞台挨拶にのぞみました。

伊藤さんはまず、ジャック&ベティで上映してもらえてとてもうれしいので、今日はありがたくやってきました、とあいさつしました。去年のいまごろ撮影したからちょうど一年経ったけど、今日3回目を観てどうでしたか? と福間監督が尋ねます。
「ここでこういう場面だったっけ? また編集が変わったのかな?って思ったりした。3回目なのに初めて観るような錯覚を起こした。わかりにくい人もいるかもしれないけど、2、3回観るとまたちがってくる。そこが福間監督の映画のおもしろさですよね」。
「僕は、文法どおりにショットをつなぐような、ふつうの映画のやり方がいやなんですね。撮影は速いけど編集には時間をかける。今回は流れとしてはわかりやすい方だと思ってつくったんですけど」と福間監督。伊藤さんは「ホームレス」のシーンがわかりにくかったと言います。福間監督が「船倉」と言っているシーンのことで、村岡の夢として登場させたけれど、ミクの存在自体も夢と現実を行ったり来たりするような存在として考えたとのこと。夢と現実が出会うところに、希望をおきたいと福間監督は言います。「夢としてなら、突然その場面になるのではなく、夢に入るサインがあったりするのが一般的だから、ある意味不親切なところはあるかもしれませんね」と伊藤さん。そのあたりは、なかなかむずかしいところですね。
横浜 シネマジャック&ベティ初日舞台挨拶
これまでのトークなどでも何度か話されてきたことですが、伊藤さん演じる宮本は、「ふつうの男」で、これを演じるのはなかなか大変だけれども、「色に染まっていない」伊藤さんでなければできなかったと、福間監督はあらためて言います。
「僕は主演だけれど、主役ではない。村岡を中心にして、彼の妻と僕。食堂を中心にして、ミクと僕と則子さん。ベースとしてあたりまえの日常を生きる男の、いろんな人間関係のなかでの苦悩や楽しさを出すことを考えたんです」と伊藤さんは言います。
「でも、伊藤さんはいい男、ほんとにいい顔してる」と福間監督が言うと「そんなこと言われたことないですよ」と伊藤さん、照れてます。
福間監督が「かわさきFM」に二度目に出演したとき、宮本と村岡と美咲の関係を、向田邦子の「あ・うん」を元にしたことをパーソナリティの岡村さんと話しているうちに、この関係は『冒険者たち』の三人にもつながると思いついたそうです。
伊藤さんがアラン・ドロンで、佐野さんがリノ・ヴァンチュラ。これけっこうわかりますよね」と言う福間監督に対して、「アラン・ドロン」の伊藤さんは苦笑い。会場もにこやかになってきたところで、もう時間です。
「今日はたくさんの方に観ていただけて、うれしかったです。ご縁があったら、これからの福間監督の作品でもまたお願いします」と伊藤さんは客席の皆さんと監督にそう言いました。
そして、今日からスタートしたジャック&ベティでの『秋の理由』を、いいなと思ったらまわりの方にぜひ薦めてください、と福間監督がお願いして、舞台挨拶を終えました。
初日に駆けつけてくださった皆さん、伊藤洋三郎さん、そして梶原さんはじめスタッフの皆さん、ありがとうございました。
横浜 シネマジャック&ベティ初日舞台挨拶
横浜ジャック&ベティでの上映は、12月16日までつづきます。
~9日(金)     15:30~
10日(土)~16日(金)18:25~
東京と神奈川での上映は、これが最後になります。
どうぞお見逃しなきよう、ジャック&ベティで!
ニュー八王子シネマ上映前の朗読
ニュー八王子シネマ上映前の朗読
2週目に入ったニュー八王子シネマでの『秋の理由』上映。11月27日(日)、13時30分の回の上映前に、福間健二監督による詩の朗読とトークがおこなわれました。
岡山、松山、名古屋の舞台挨拶ツアーから前日戻ったばかりの福間監督ですが、元気です。
まず、「みなさん、映画を見ることには慣れているでしょうが、詩の朗読を聴くのは初めてという方もいらっしゃるでしょう。どうぞ、気楽にリラックスして聴いてください」と、スタート。

つづいて、2000年に出された詩集『秋の理由』を「原作」とした経緯、共同脚本の高田亮さんとのエピソード、映画のなかで詩を読むパートをいちばん多く担当してくれたミク役の趣里さんの天才ぶりなどについて語りながら、詩を読んでいきました。

詩と映画、どんなふうにつながるのでしょう。「ぼくは、この世界に生きていたい。生きるってことを肯定したい。そういう率直さを出したいんだけど、そこへ行くまでにどうしてもまわり道してしまう。その感じは、詩も映画も同じです」と福間監督。

この日、朗読したのは、「秋の理由」「ミスキャスト」「ぼくはまだ黒い芯を昂らせている」「失敗する勇気」「誘惑」の5篇です。「ぼくはまだ黒い芯を昂らせている」は、詩では漢字を使った「昂らせている」だったのを、今回の映画のキャッチフレーズでは「たかぶらせている」とひらがなにしたことや、それぞれの作品が特定の場所や時間と結びついていることなどについて話しました。

上映後のロビーでは、「センティメンタルな自分がいる一方で、それを押さえたいという自分もいる。その葛藤が詩になっている面もあるけど、映画ではみんなと作っていくので、その葛藤が開かれていく楽しさがある」と、そんなことも話しながら、次々にパンフレットにサインを求める観客のみなさんとの交流の時間を持ちました。

福間健二の詩のファンの方も多かったようですが、この八王子で初めて福間健二の詩と映画に接した方もいて「よかった」と言ってもらったことが、福間監督はとてもうれしかったようです。みなさん、本当にありがとうございました。

ニュー八王子シネマでの『秋の理由』は、12月2日(金)までです。
連日、11:05/13:30/19:20の3回上映です。どうぞ、よろしく!
名古屋シネマテーク舞台挨拶
名古屋シネマテーク舞台挨拶
『秋の理由』、名古屋シネマテークでの上映が始まりました。
初日、11月26日(土)12時30分からの上映後、福間健二監督の舞台挨拶がおこなわれました。これまで長篇第一作『急にたどりついてしまう』(95)以来すべての作品をシネマテークで上映してもらっている名古屋大好きの福間監督。前日の夕方から名古屋入りして、その夜はシネマテークのある今池界隈を詩人仲間の方たちと散策しました。もちろん、終点は居酒屋です。
シネマテークのロビーの本棚に並ぶ外国の映画雑誌を見るのも、福間監督の楽しみのひとつ。上映前の時間、福間監督はすっかり寛いでいる様子でしたが、実は上映開始が待ち遠しくてならなかったようです。

舞台挨拶の模様は、YouTube でご覧になることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=X_eEcbI5qB4
福間監督、最後に、やはりこの日からシネマテークで上映される親しい黒川幸則監督の『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』もよろしくと語っていますね。

上映後、パンフレットにサインを求める方たちの長い列ができました。「今夜、『ヴィレッジ』も見ます」と言った方に、「ありがとう。そういうふうにつながっていくことが大事なんです」。観客の方たちと話をしているうちにどんどん時間がたっていきましたが、話したかったのに機会を逸した方もいたようで、福間監督はあとでそのことを気にしていました。みなさん、ありがとうございました。

名古屋シネマテーク、『秋の理由』は、第1週の12月2日(金)までは12時30分から、第2週の12月3日(土)から9日(金)までは20時25分からの、それぞれ一回上映です。名古屋近辺のみなさん、どうぞよろしく!
松山シネマルナティック舞台挨拶&トーク
松山舞台挨拶&トーク
さて、11月23日(水・祝)、岡山から高速バスで松山にやってきた福間監督。ホテルにチェックインしてすぐに、温泉に直行。小さいホテルながら、なんと温泉大浴場付き! さすが道後温泉の松山です。温泉好きの福間監督は、ポカポカにあたたまってから、湊町にあるシネマルナティックに向かいました。
シネマルナティックでは、『岡山の娘』以降のすべての福間監督作品を上映してもらってきています。支配人の橋本さんもスタッフの梶野さんも、いつも変わらず古い友人を迎えるようなあたたかさで待っていてくれます。そして今回も、福間監督作品を楽しみにしていてくださる映画好きのみなさんが、18時40分の上映めざして来てくださいました。
映写チェックを終えて、上映開始。上映中はいつものように、橋本さん梶野さんとともに「映画四方山話」。あっという間にトークの時間になり、福間監督と梶野貴和巳さんが登壇しました。

「福間監督の作品をルナティックで上映させてもらうのは4本目で、おかえりなさい、と言いたい気持ちです。今回の『秋の理由』は有名な俳優が出ていますが、何か決断があったんですか?」と梶野さん。「佐野さんがまず決まった。むずかしいミクの役はオーディションしたけれど、なかなかみつからない。低予算映画だから高いギャラを出せないけれども、この役は趣里ちゃんだと思ってオファーしたら引き受けてくれた。それから寺島さんも伊藤さんもうまく決まっていったんです」と福間監督。当て書きだったんですかと梶野さんが尋ねると、佐野さんだけは当て書きだったけれど、趣里ちゃんはホンを読んで自分のためのホンだと思ったと言ってくれてうれしかった、佐野さんと伊藤さんには、僕の世界をこわしてくれと言ったとのこと。これまで福間監督がずっと話してきたことですが、役者の地が出ることが大事ということ。それがうまくいっている、役者を信じていることが見えていると梶野さんは言いました。
これまで主に女性を描いてきた福間作品だけど、今回男を主人公にしたことで、自分をさらけ出すみたいで大変だったのでは? と梶野さん。「自分をさらけ出すしかない。佐野さんが意識していた佐藤泰志のことは、あまり出したくなかったけれどやはり泰志の状況に近い方になっていった。しかし、泰志に引っぱられながらも佐野さんの意欲で生の側へともっていけた。佐野さんの体験、ガンで死ぬかもしれなかった状況から生還したことが大きい」と福間監督。
「物語は決して明るくはないけど、見終わって暗いイメージを残さない映画になっている」と梶野さんが言うと「ミクの存在が大きい。闇と光の間を行き来できる存在、若い女性。ホンを読んだ助監督に、ミクの存在がわかりませんと言われたけど、ミクがいないこの映画は成り立たない」と福間監督。そして、声の出ない村岡=佐野さんの使う筆談器の話題になっていきます。「筆談器があることがプラスになるように、どこかサイレント映画的に、宮本=伊藤さんが読んであげればいいとか。男が二人いたって、大したことしてないですよね」と福間監督。「男二人と男三人はちがう。この場合は筆談器が三人目になっているように思います」と意表をついた梶野さんの発言。話題は尽きません。
「まだ黒い芯をたかぶらせている」の「黒い芯」は、「燃え尽きてしまうもの」を連想して、それが「たかぶる」のだから、まだ終わらないという印象を持ったと梶野さんは言います。
「村岡もミクも黒いゴミみたいなものを拾って、なにか闇に引きずられていく。映画は光と闇、人生的にも涙と笑い、死と生がある」と福間監督。でも出来上がってみないとわからないところがありますか? と梶野さんが尋ねると「そうなんですよ。いつも出来上がってから、ああ、なんとかなってよかったって思うんです。それは、一博さんの画がまずあって、秦くんが編集してくれて小川さんが音を考えてくれてという時間が6ヶ月近くつづく。ひとりでやっていない、みんながアイデアを出してくれるということで、出来上がっていくんですよね」と福間監督は噛みしめるように言います。
最後に、監督は客席に向かって言いました。 松山で毎回こうして上映してもらって、熱心に観てくださる方がいることをとても幸せに思います。映画は、観てもらうことから始まる。人とも出会える。次の作品でもまた松山に来ます。みなさん、ルナティックをどうぞよろしく! ルナティックで映画を観てください。今日はありがとうございました。

この日のルナティックの上映は『秋の理由』で終了したのですが、ロビーに出てからもトークの余韻はつづいて、福間監督に感想を伝えてくれる方やパンフレットにサインを求める方で、なごやかな空気が流れました。
それから、いつものように愉しい打ち上げ。宇和島や今治から来てくださった方も終電ギリギリまでつきあってくださいました。
松山の皆さん、ルナティックの橋本さん、梶野さん、そして東京からルナティックを支える山﨑はなさん、ほんとうにありがとうございました!
岡山メルパ舞台挨拶
岡山メルパ舞台挨拶
『秋の理由』岡山メルパでの上映は、新宿K’s cinemaの最終週とかさなって、11月12日から始まりました。2週間の上映の後半、11月22日(火)15時30分の回上映後に、福間健二監督と岡山市在住で中学3年生の岡本優里さんの舞台あいさつが行なわれました。
岡本優里さんが演じたのは「公園で泣く娘」です。映画の最後あたり、公園を歩く寺島しのぶさん演じる美咲の横で、泣きながら「ばかやろう、ばかやろう」と叫んでいるのが岡本さんです。この撮影は、撮影初日の午後に国立にある公園で行なわれましたが、岡本さんはその2時間ほどのために岡山から日帰りで来てくれました。小さな役だけれど、初めての映画出演。今日の舞台あいさつには、彼女のお母さんもおばあちゃんも来てくださっています。

福間監督はまず、岡山の皆さんにあいさつをしてから、撮影のときの感想などを岡本さんに尋ねていきました。「国立は落ち着いた田舎みたいな印象で、落ち葉一面の公園がきれいだった」とのこと。初めての映画だったから緊張して、お弁当を少ししか食べられなくてもったないことしたなあと思ったそうです。寺島さんとの「共演」については「テレビで見ている人がそこにいることに、うれしいけれどすごくドキドキした」と。監督が、優里ちゃんの顔が横顔だけしか映ってなくてすまなかったけど、髪の長さや衣装のせいもあるのか、すごく大人っぽくみえるよねと言いました。撮影当時岡本さんは中学2年生。中2までは上に見られていたけど、いまは実際の中3に見られるそうです。
そして監督の「映画どうだった?」に対して「うーん……むずかしかったけど、おばあちゃんが説明してくれて、わかったところもあった。自分が出たシーンはカットされたんじゃないかと心配してたけど、思ってたよりもすごく長かった」と岡本さん。すると監督が言いました。「ここはカットできないところだったんだよ。泣いてるシーンは必要だった。『だれかが泣いているために秋が来たわけではないことを知った』という大事なフレーズを使ってるからね」。そう、岡本さんの役は特定の誰かではないけれど、とても大事な役だったのです。
「おばあちゃんも、むずかしいと思ったところがあった」という岡本さんに、監督は映画や詩に対する考え方を話しました。「ふつうにまともに物語を追うものは、やりたくない。ふつうじゃないものを、自然な流れにもっていくことを工夫する。それが表現としてとても大事なことだと思ってるんです。自分がいいと思う画と音が撮れて、それを編集で時間をかけて調整していく。『秋の理由』とその前の2本で組んでいる、鈴木一博さん、小川武さん、秦岳志さん。この、今の日本の最強のスタッフがいてくれて、僕の表現は成立しているんです」。
福間監督は今回、撮り方について、前もってカメラマンの鈴木さんとけっこうきちんと打ち合わせしたそうです。ところが、現場ではふたりとも忘れていた。役者同士がそれぞれ持っている地をうまく引き出してくれれば、それが一番だと思うから、打ち合わせどおりにいかなくてもいいと思うとのこと。
「最後の夜のシーンがとても印象的でした」という岡本さんに対して監督は言います。「佐野さんがロープを引きずって公園の中を歩くところから踏切に立つところ、あれを撮りながら、背中がゾクッとするくらいに、これが映画だ!って思った。で、そのあとのロープを巻くところ、あれはスマホの明かりで撮ったんだけど、闇の黒が出て、奇跡のように、映画、光と闇でつくられる映画というものができた、そう思って興奮しました」。
さて、もう時間です。岡本さんに「これから女優をめざしていくの?」と監督が尋ねると、「いまは高校受験を控えているから、高校に入ってからじっくり考えたいです」と答えました。
『岡山の娘』の撮影から9年、新しい作品をこうして岡山の皆さんに観てもらえて、とてもうれしかったです。これからもつくり続けていきますので、どうかよろしくお願いします。そう福間監督はしめくくって、舞台挨拶を終了しました。

岡本優里さん、岡山の皆さん、そしてメルパスタッフの皆さん、どうもありがとうございました。
メルパでの2週間の上映は、11月25日(金)をもって終了しました。『秋の理由』を観てくださったたくさんの皆さまに、あらためてお礼申し上げます。
ニュー八王子シネマ初日舞台挨拶
ニュー八王子シネマ初日舞台挨拶
ニュー八王子シネマ、『秋の理由』の上映がはじまりました!
初日の11月19日(土)、14時35分からの3回目の上映後、宮本役の伊藤洋三郎さん、村岡役の佐野和宏さん、福間健二監督の舞台挨拶とトークが行なわれました。司会は小林良二プロデユーサー。
とてもあたたかい客席の雰囲気に、三人とも、上機嫌。「いままで男を撮るということにもうひとつ気合いが入らなかったけど、今回はまったく違いました。伊藤洋三郎と佐野和宏、二人の男に惚れて、興奮しながら撮影しました」と福間監督。
伊藤さんが撮影時のことを「もうあまり覚えていないんだけど、監督が手際よく、どんどん撮っていくので、どうしようとか考えている暇がなかった気がします」と語ると、「宮本は、いわゆる個性を発揮するのとはちがう、むずかしい役だったよね」と福間監督。「普通に立っていればいいとか言われましたが、人間ってだいたいこういうものなのかなという感じでやりました」と伊藤さんは笑いながら答えました。
佐野さんが「監督の友人である佐藤泰志のことを意識しながら演じた」と言い、25年前に自殺した作家佐藤泰志のことが話題に。
「ぼくが作家の話をやるとなると、どうしても佐藤泰志と関係ないところではできない。そうしたくないと思いながら、死に向かったときの佐藤泰志へと引きずられていった。でも、最後のところで、佐野和宏の演じる村岡は生の側へと引き返してくる。佐藤泰志とは別な、佐野和宏の作家になっていると感じることができた。そのことにとても感謝しています」と言う福間監督に、「ありがとうございます」と佐野さん。
実は、ニュー八王子シネマは、村岡の夢の中に出てくる「船倉」のシーンを撮影した場所なのです。難民のような人たちが体を寄せ合っているシーンです。屋上にある倉庫が使われました。「50年前が残っているような場所で、いいなと思った」と福間監督。撮影したのが、去年の11月16日。その日は佐野さんの誕生日で、撮影のあと、趣里さんがハッピー・バースデーを歌って、みんなでケーキなしで祝ったことが、紹介されました。
後半は客席からの質問と感想を受けるかたちに。
まず、「伊藤さんも佐野さんも映画よりもカッコいい」という声が出ました。お二人は照れていましたが、「美しい映画でした」「とてもよかったです」の声に福間監督はとてもうれしそう。「この映画で何が言いたかったのか」という質問にはちょっと困りながら、「さびしい季節としての秋ではなく、次の段階へと生き抜くための秋、闇の奥まで行って光の方へ戻ってくる、そういう秋を、観客のみなさんにも体験してもらいたかった」と語りました。
とても残念なことに、ニュー八王子シネマは、来年の1月末で閉館となることが決まっています。そのこともあって、最後にニュー八王子シネマの中島幹和支配人が「映画館という場所についてどんな思いがありますか」と三人に質問しました。
「映画館で見る映画の体験」がどんなに大事か。そのことをめぐって、三人がそれぞれに思い出もまじえて話しました。「家で気楽に映画を見られるビデオの時代になったけれど、いま、ひとりで映画館で観るのはとても贅沢な時間だと思う」と伊藤さん。佐野さんは「僕は客電が消えて真っ暗になる時が好きだった。でも最近は劇場が明るくなって、集中しにくいのが残念」と「筆談器」で語りました。そして「映画は闇と光。それが涙と笑い、死と生にもつながるんです」と、映画館の闇が好きで好きでたまらない福間監督が興奮気味に語ると、さらに客席からも熱く語る声がつづきました。
来てくださったみなさん、ありがとうございました。

『秋の理由』ニュー八王子シネマでの上映は、12月2日(金)まで。
11月27日(日)には福間監督が詩の朗読をします。
13時30分からお話と朗読をスタート。映画で使われた、詩集『秋の理由』から4篇ほどの詩を読みます。その声の余韻を残しながら映画『秋の理由』の光と闇へ。
ぜひご体験ください!
特集上映レポート4『あるいは佐々木ユキ』
小原早織さん・籾木芳仁さん・福間健二監督
特集上映レポート4『あるいは佐々木ユキ』小原早織さん・籾木芳仁さん・福間健二監督
11月17日(木)、〈福間健二特集 Who is Kenji Fukuma?〉は最後の回を迎えました。今夜は『あるいは佐々木ユキ』(13)。トークゲストは、主演の小原早織さんと、香山/Kの二役を演じた籾木芳仁さんです。二人は福間監督が大学で教えていたときの教え子であり、在学中に『わたしたちの夏』と『ユキ』に出演しました。『ユキ』の公開から4年近くを経て、三人のトークが実現。二人が本作を観るのは、公開のとき以来です。

小原さんの第一印象は「前は、言葉が入ってこない感じがあったけど、いまはちゃんと耳に入ってくる」。籾木さんは「前も思ったけどやっぱり不思議な映画。多くの映画には時代感があるけど、これは古びない、普遍的なものがあると思った」と。『ユキ』は2011年の1月に撮影、その直後に3.11があり、2013年に公開。最後のモノレールから見る風景は、震災をくぐり抜けて未来に向かっていく感じが出たと思う、古びてないよね、と福間監督は言います。
つよいインパクトを残した、足を洗うシーンについて「Kが自分で洗っていて、途中からわたしの足がカメラのフレームに入っていくんだけど、風呂釜の縁に乗って待機してたから、ほんと大変だった!」と小原さん。それに対して籾木さんは「小原さんに、当時彼女がファンだった岡田准一になったつもりでやれ! って言われた」と返します。
この日『秋の理由』と『ユキ』をつづけて観た籾木さんは「いい意味で5年という時間を感じさせない。福間監督、ブレないなあ」と。『秋の理由』に「ミクと同じ種族」のフミ役で出演している小原さんは、「『秋の理由』には現実があってユメがさしこまれている。『ユキ』はユメ。5年は現実を感じながらやってきた時間なのかなあと思った」。「作品と作品の間は、悩みこんじゃうんだよね」と福間監督。
ユキがモノレールに乗っているところもまた、多くの人の記憶に刻まれたシーン。あそこは、立川から多摩センターへの25分ほどの間にゲリラ撮影されたもので、一発撮り。カメラマンの鈴木一博さんの集中力と小原さんの度胸で決まった、と福間監督。「午後からの授業に行くその道中で、一博さんは無言で乗客をどかしながら三脚立てて、ものすごい集中力だった」と小原さんは感動をまじえて言います。「一博さんはめちゃカッコいいですよ!」と籾木さん。福間監督は「学生スタッフだけの現場を、ひとりだけプロだった一博さんがシメてくれた。こんな映画、もうできないかなあ」とちょっと寂しげ。
なんだか「同窓会」みたいな三人のトークです。福間監督は最後に、福間健二に望むことを二人に尋ねました。『わたしたちの夏』に出たことがきっかけで俳優となり、舞台・映画・ドラマで活躍の場を広げつつある籾木さん。「もっと撮ってください。そして僕を使ってください」と。大学卒業後「ふつうに働いている」という小原さんは「このまま映画づくりを続けていってほしいです。わかりやすい映画はいっぱいあるけど、そうじゃないものをつくっていってもらいたいです」と話しました。
すっかり笑顔になった福間監督、客席の皆さんに感謝の言葉を送って、トークを終了しました。小原さん、籾木さん、今夜はありがとうございました。

『あるいは佐々木ユキ』は、小品ながら福間健二の世界が色濃く出ていて、コアなファンをつかんでいます。再映の機会を、遠くない将来に持ちたいものです。そのためにも、映画をつくり続けてもらいたいですね、福間監督!
イベントレポート 8
城定秀夫監督・福間健二監督
さて、『秋の理由』トークの8回目、11月16日(水)は、城定秀夫監督をゲストにお迎えしました。上映中最後のトークイベントです。
城定監督は41歳の若さですでに、ピンク映画やオリジナルビデオを100本近くも監督されています。福間監督は、2003年、当時城定監督が共同でホンを書いていた高田亮(『秋の理由』共同脚本)さんに城定監督作品を紹介されたことがきっかけで、ファンになりました。今日は福間監督の念願かなっての初トークです。
福間   考えてみれば、城定さんとあまり話したことなかったですね。
城定   人見知りなもんで……。
福間   僕がいま一番話を聞きたい監督が城定さんです。城定さんの作品、すごくたくさんありますけど、どの作品にも「ここが城定だ!」があるんですよね。すごいことです。『秋の理由』いかがでしたか?
城定   ストーリーがどうこうではなくて、観ていてきれいだなとか気持ちがいいなとかが大きいですね。よかったです。まず詩がある。原作があるんですよね?
福間   原作というか、タイトルを使うことから始まって、プロットを書いてもらった高田くんに詩集を読んでもらって、そのなかのフレーズを使ってという感じ。
城定   高田くんのプロットに詩を、なるほど。あ、高田くんなんて言っちゃいけない(笑)。女の子の登場、あの発想は詩ですよね。
福間   60の男と若い女の子が出会うのはむずかしい。城定作品にも夢と現実がよく出てきますけど、夢だから勝手でいいわけではない。理屈で決められないから、画で、秋の風景の中に立てればいいと思ったんですよね。
城定   画で。そうですね。たくさん映画を観てくると、もうストーリーはどうでもいい、僕はこういう方がいいと思うんですよね。観ていて、昔、子どもを連れて新宿御苑にどんぐり拾いに行ったことを思い出しました。
福間   城定さんは武蔵美ですよね?
城定   映像科で、絵は書いてなかったし、アートには詳しくないです。
福間   城定作品も画で観せますよね。
城定   2〜3日で撮るとなると、偶然をつかまえる、現場でみつけだすんです。最初からあれがほしい、これがほしいだと、がっかりしちゃうことが多いです。そういう育ち方をしてきた。アニメのようにきちんと決めてやることはできない。低予算でやるには、そのなかで何かが起こってくれるのを待つんです。
なぜ作家だったんですか? 佐野さんありき?
福間   佐藤泰志のことは出したくなかったんですけど、何かそういくしかないように、ひっぱられていった感じかな。映画で作家的な存在が出てきても、モノ書いてるように見えないことが多いですよね。佐野ちんはアメリカの作家のようにやりたいって、衣装もたくさん持ってきたんですよ。
城定   アメリカの作家って言われてもピンとこないけど……。佐野さん、筆談器ですよね。現場はどうだったんですか?
福間   声が出なくても、だんだんわかるようになったんです。コミュニケーション、そんなに大変じゃなかったです。
城定   佐野さんが手術して声が出なくなったことを知らなくて、中野で買い物かなんかしてたら、後ろから肩を叩かれたら佐野さんで、「久しぶり!」って身ぶり手ぶりで。それで初めて知ったんですよ。
洋三郎さん、いい人ですよね。出てもらったことがあるんだけど、最初仏頂面でコワイって思いました。
福間   僕は、男をちゃんと撮ってないって言われるんです。男だけのシーンだとやる気なくて、女性が入るとやる気になる、だったんですけどね。今回、ジョン・フォードに負けないようにとか考えて。(場内笑)
イベントレポート 5:寺脇研さん・福間健二監督
城定   筆談器は、書いてパンっと消す、そういう効果が?
福間   佐野ちんは、筆談器使うとダレるんじゃないかって心配したんです。
城定   ふつうだと不自然だけど、こういう見せ方もあると思いましたね。
福間   男二人って、何してるか。酒飲むとか将棋するとか、あと釣りとか、でも何もしてないみたいなね。
城定   うん、思い出しても何してたんだろうって……。映画の二人は、枯れた味わいが見えてきて、いい感じでした。
福間   贅沢しない、ああいうシーンでも安めでいく。つまみが並ぶとかじゃなくて、あるものでっていう感じで。
城定   悪い意味じゃなくて、おしゃれでしたよね。店とか、お金はかけてないけど。
福間   じつは去年の今日インしたんですけど、佐野ちんの誕生日でもあったんです。あの船倉のシーンがその日の撮影の最後だったんだけど、趣里ちゃんがハッピーバースデー歌ってくれてね。
城定   趣里さん、夢なのかなあって思ったり、不思議な存在でしたね。
福間   僕は、夢と現実、区別しないで出したい。城定さんの『悦楽交差点』の後半、夢か現実かだけど、夢の幸福感にひたっていても、現実はやってくる。肯定感で終わりますよね?
城定   僕は、否定から入ることが身についてしまってるんですけど、何がダメかを追求すると、どうでもいいじゃないかって気になって。たとえば、こいつをどんどんいじめてやろうと、でもだんだんかわいそうになってくる、ならば肯定にもっていこうかってなるんです。
福間   娯楽映画のよさですよね。
城定   『秋の理由』の終わり、肯定ですごくほっとした。どう終わるのかって思ってましたから。
福間   「世界はいい匂いがする」つまり生きる価値があるってことだけど、これをバンバン言いたくない。それは城定作品で起こってることなんですよね。何か愉しい、そこを見たいんです。簡単に答えない、そこがいい。
城定   僕が先に褒められると、照れくさい……。(場内笑)
福間   2日撮りって、もちろん徹夜ですよね?
城定   徹夜で、3日目の午前中まで。この映画は何日で?
福間   6日間と30分。夕方で上がる日もあった。
城定   こんだけの役者使って、すごいですね。
福間   みんながベストを出せるのが一番です。
城定   まあ、役者がちゃんとしてれば、監督はやることないです。ホンがあってね。
まあ、やってみなければわからないけど、低予算映画は、ほんとはしっかり用意をしなけりゃならないのに、僕はきちんとやらずにいく方で……。
この映画、カット割りなんか、ふつうに考えると少しヘンなところあるけど、これが詩人の監督なのかなとも思いました。
福間   僕は高校生のころ、8ミリやってたんですよ。ヴォイスオーバーが多くなるのは8ミリのやり方。
城定   僕も8ミリやてたから、よくわかる。流れやカット割りは、みんなの感覚に合わせる、ヘンでもいいと。かと言って寸法考えてやってもね。そういえば撮影は一博さんですね。
福間   彼が心配してくれて、今回はけっこう打ち合わせやったけど、二人とも現場では忘れてたんです。
ああ、もう時間がきてしまいました。
城定   ええ、とてもいい映画でした。
福間   18日まで上映してます。K’s cinemaは、音も画もすごくいいです。どうぞまわりの人に薦めてください。リピートで1000円で観てもらえるので、ぜひもう一度観にきてください。今日はありがとうございました。
いつもは、つい自分の方が喋りすぎてしまう福間監督ですが、今日は「一番話を聞きたい」城定監督だったので、しっかり「聞いていた」ようでしたね。「偶然をつかまえる。現場で見つけだす」という城定監督の映画への向きあい方、福間監督ととても共通しています。これからもお互いを刺激しあう関係を続けていってもらいたいと思いました。
城定監督、どうもありがとうございました。
宣伝スタッフ どんぐり
特集上映レポート3『わたしたちの夏』
吉野晶さん・千石英世さん
特集上映レポート3『わたしたちの夏』吉野晶さん・千石英世さん
〈福間健二特集 Who is Kenji Fukuma?〉3日目の11月14日(月)は、『わたしたちの夏』(11)。今日は監督不在で、主演の吉野晶さんと、実名の千石先生役で出演した千石英世さんのトークです。吉野さんと福間監督とのつきあいはもう20年あまり。吉野さんは08年の『岡山の娘』に遺影として出演してから、以降のすべての作品に参加しています。一方の千石先生は、福間監督と大学院のときに出会って以来の友人で、文芸評論家であり、アメリカ文学の研究者です。今日は、福間監督をよく知るお二人のトークです。

公開時に一度観てから、5年ぶりに観たという千石先生は「よくできた作品、何回も観るようにできている作品だとあらためて思った」。吉野さんは「いわゆる商業映画とはちがっていて、ストーリーを追うよりも、音や画を感じる映画ですよね」。
千石先生は、ご自身が実際に行なった大学での文学講座を再現するかたちで登場します。これについて吉野さんが尋ねると、「シナリオには大きい流れが書いてあるだけで、学生がちょっと代わって、いつもやってることだったから、普通に授業をやった感じだった」と。すると吉野さんが「わたしは授業のシーンには参加してなくて、この映画で唯一千石先生とからむ、姪のまり子の家でわたしと三人で話すシーンしか知らないんですが、あのとき、お皿の下に台本置いて読んでましたよね」と突っこみます。
さらに興味深いのは、吉野さんはこの作品のみならず「僕の言いたいことを僕に代わって晶ちゃんに言ってもらう」と監督から言われたとのこと。「そうですか。吉野さんは福間さんの代弁者なのか」と千石先生。福間作品に欠かせない吉野さんには、福間監督の内なる声が潜んでいるのですね。

『わたしたちの夏』の次の作品『あるいは佐々木ユキ』でも共演しているお二人。千石先生は、『ユキ』では「演技しなければならなかったから」困ったそうです。でも福間さんのオファーを断れなかったからなんとかやったとのこと。映画で役を演じる前と後で、自分に何か変化がありますかと千石先生が尋ねると「撮影のあと、ふだんの自分ではあるけれど、ひとつふくらんだものを感じますね」と吉野さん。千石先生、深くうなずいていました。

「地面や空、乗り物から動く音まで、ジグゾーパズルのピースを、平行にコラージュするように組み立てていくのが福間映画」だと千石先生は言います。福間映画論を書いてもらいたいですね。
そして「明日の『あるいは佐々木ユキ』、『夏』とはまた違う顔の千石先生とわたしを観てもらえたらうれしいです」と吉野さんが挨拶して、トークは終了しました。
千石先生、吉野晶さん、今夜はどうもありがとうございました。

福間映画は、観るたびにあたらしい発見があり、味わいが深まる。よく言われることですが、今回の特集上映でそのことをあらためて実感しています。

特集上映は17日(木)までです。21時からのスタート。
どうぞこの貴重な機会をお見逃しなく!

16日(水)『急にたどりついてしまう』
17日(木)『あるいは佐々木ユキ』トークゲスト 小原早織・籾木芳仁・福間健二監督
特集上映レポート2『岡山の娘』
若木康輔さん・福間健二監督
特集上映レポート2『岡山の娘』若木康輔さん・福間健二監督
〈福間健二特集 Who is Kenji Fukuma?〉2日目の13日(日)は、『岡山の娘』(08)。客席で見ていた福間監督は、ロビーに出てくると、いきなりトークゲストの若木康輔さんに「すさまじい映画だね!」と笑いながら言いました。福間ワールド、いつもどこに行くかわからないようなところがありますが、『岡山の娘』はとくに表現がやりたい放題的に広がっていく作品です。

若木さんは、『秋の理由』パンフレットにも洞察鋭い原稿を書いてくださっています。前もって見直してもらった『岡山の娘』については、ツイッターで「脱正統の粋と思ってたけど違う。福間さんはやはり凄く正統にジャンル映画を愛する人だった。不機嫌な黒いタンクトップの女の子にとって求職・死別・再会の毎日こそがアクション。言葉が銃撃戦。悪役も味方も自分。」と書いています。

「福間映画のヒロインの若い娘たちは、みんな貧乏ですね。お金がなくて困っている。どうしてなんでしょう」。若木さんならではの新鮮な質問がまず出ました。「ウーン、どうしてなのかな」と福間監督は考えこみます。「たとえば、美空ひばりの初期の主演映画に似てるんですよ。歌と奇跡のないひばり映画!」と。そして「『岡山の娘』に限らず、福間映画には、福間さんの少年時代からの映画体験が無意識に取りこまれていると思う。どの作品にも共通しているのは、裏側に、黒い影や裏社会みたいなものが隠されている」と若木さん。福間監督またもや「ウーン……」。若木さんは思いもよらぬ角度から福間ワールドに迫っていきます。「いや、じつは『秋の理由』の最後は、男二人で殴り込み、なんてことも考えた」の福間監督の爆弾発言に、「どこへ殴り込みに行くんですか !?」とかわした若木さんに場内大爆笑。

スリリングな、とても濃い内容のトーク。というより若木康輔斬り込みトーク。 いままでほとんど指摘されることのなかった、福間監督が若いときから見てきたジャンル映画との関連が、畳みこむように解き明かされていきました。あっという間に終わってしまった感じです。「指摘してもらったこと、いちいちおもしろくて、ぼくも乗りました」と福間監督。もっともっと聞いていたかったです!
若木康輔さん、ありがとうございました。

特集上映、さらに続きます。みなさん、お見逃しなきように!
特集上映レポート1『急にたどりついてしまう』
今泉浩一さん・小林節彦さん・福間健二監督
特集上映レポート1『急にたどりついてしまう』今泉浩一さん・小林節彦さん・福間健二監督
12日(土)からスタートした〈福間健二特集 Who is Kenji Fukuma?〉。初日は長篇第一作『急にたどりついてしまう』(95)。トークショーのゲストは、正夫役の今泉浩一さんと衆木役の小林節彦さん。お二人は、公開時に一度観て以来だそうです! 何度も観ているという福間監督と一緒に客席で観て、すっかり感激した様子です。

まず、小林さんが「よかったです。なつかしくて、いとおしくて。当時は『急にたどりついてしまう』というタイトルの意味がよくわからなかったけど、いまはすごくピンと来た」と語りました。語り草となっていることですが、ピンク映画の監督たち、助監督たちが結集し、撮影は夜遅くまでかかることが多く、熱い現場だったとのこと。

「ぼく以外はみんなプロで、ぼくだけがよくわかってなくて、時間がかかってしまった」と福間監督。「これ、ぼくは何度も観ているんだけど、タケシが亡くなってあとに観て、なにか、変わった。自分で言うのもおかしいけど、いい映画だなと思えるようになった」と。そう、主人公のソーセージ屋の職人、立花信次を演じた伊藤猛さんは、2014年に亡くなりました。今泉さんが、伊藤猛さんとの思い出を、一言ひとこと噛みしめるように語りだしました。

小林さんが「タケシは青春スター。ぼくは同い年なんだけど、最初からオッサン役」と客席を笑わせます。
「福間さん、タケシとよく話したんですか?」という今泉さんの質問に「実は、あまりうまく行ってないところがあって、それをずっと気にしてきた」と福間監督が告白。「そんなふうには見えませんよ」と今泉さんはカバーして、「ぼくは、タケシとは何度も共演しているけど、二人で会話するシーンって、この作品くらいしかないんです」。

「立花と正夫のシーン、今日観ていて、何度も涙が出そうになった。とくに、今泉くんの正夫に『立花さんの作るウインナーが一番おいしい』と言われ、タケシがそれを受けて考えるところ。クライマックスだと思って撮った」と語る福間監督に、「ぼくも、あそこがキモだと思う」と今泉さん。伊藤猛の魅力、この作品で出た優しさの一面などについて話がつづき、最後は「タケシの一番ダメなのは、死んでしまって、ここにいないこと。生きていれば、おもしろいことがいくらでもある」と小林さんがキメました。そしてリサ役の松井友子のすばらしさも語られました。

いま、今泉さんは役者であると同時に、自らの個性を貫く監督として世界の映画祭で活躍しています。そして小林さんはいま、実に味のあるいい役者になっています。福間監督は、いつかお二人と新しい仕事ができるのを楽しみにしているようです!
イベントレポート 7
森下くるみさん・福間健二監督
『秋の理由』は、はやくも最終の第3週に入りました。その第1日目12日土曜日のトークゲストは、森下くるみさんです。文筆家であり女優である森下さんは、昨年結婚していま4ヶ月のお子さんのお母さん。出産直後にKindleからエッセイ集『虫食いの家(うち)』を出版。育児真っ只中にもかかわらず、『秋の理由』パンフレットにも「美しい秋」というすてきな原稿をいただいています。今日はお子さんを連れてトークに来てくださいました。
福間   くるみちゃんとのトークは3回目ですね。今日は赤ちゃん連れて来てくれました。パンフレットにも書いてもらってます。
森下   劇場で観ることができなかったので、DVDで何回も観たんですけど……1、2回観るくらいでは書けなかったんです。まず、わたしは佐野さんのファンなんです! すごくいい俳優だと思います。この映画は男性が色っぽい。伊藤さんもよかったです。60歳に見えないですよね。あのさわやかさは何でしょうかね?
福間   撮影のとき伊藤さん60歳、佐野ちん59歳なんですけど、伊藤さんが60歳に見えるかどうか、心配だった。手もきれいだしね。
森下   一般的に60歳は初老って思うけど、そのイメージとはかけ離れていて。
福間   ミクが「宮本さんの手ってきれい」って言うでしょ。あれ、元々ホンにはなかったけど、伊藤さんの手がきれいなのと、60歳であることをわからせたくて即興的に入れたんですよ。
森下   男性の手が好きって女友だちがいるけど、それよくわからなかったんです。でも手って、魅力的ですね。
福間   僕は女優さんの出てる現場が好きで楽しいんですよ。くるみちゃんもいつか撮りたいしね。でも、男をどう撮るか、撮りたい顔がわからない。村岡役に佐野ちんが決まって、男の撮りたい顔がだいぶ見えてきたのかな。
森下   男の人の、いろんな面に色気を感じましたね。
福間   まず、役者の持っている地を活かせればいいと思うんですよ。伊藤さんも佐野ちんもほかの女性たちも。
森下   女優さんもよかったけど、やはり男の人に目がいってしまいました。
福間   伊藤さんはこれまでいろんな役をやっているけど、新しい役に対していつもフレッシュというところがある。佐野ちんには福間ワールドをこわすつもりでやってくれと言いましたが、思いきりやってくれたんで、うれしかった。
森下   ある雑誌で、佐野さんにインタヴューしたことがあるんです。『バット・オンリー・ラヴ』のときに。役者としての我がつよいって思いましたよ。
福間   つよいです。人と張りあっていく感じだけど、監督もしてるから見せ方も意識している。芝居は、人間と人間がかかわることで引き出されるものがおもしろいと思うんだよね。
森下   他者を意識しない、ひとりよがりの芝居は、ぜんぜんダメですよね。
福間   そうそう、上手い下手ではなく、一緒にやってることで出てくるものが大事だと思うんだよね。
森下   作用しあうんだと思います、人と人が。もちろんスタッフと役者もね、うんうん。
イベントレポート 7:森下くるみさん・福間健二監督
福間   あのケンカのシーンなんかも、佐野ちんと寺島さんの演技力とかよりも、お互いに与えあうもの、相手から受け取るものの応酬であのカットが撮れた。
森下   あそこはスリリングなシーンですね。寺島さんが佐野さんを殺したりするんじゃないかとヒヤリとしました……。
福間   あれは1回で決めるしかない。テストらしいテストはしてない。
森下   寺島さんが怒ったまま1階へ降りていったあと、佐野さんが散らばった本を片づけて、という動きがとても不思議な感じです。
福間   あのあとは打ち合わせになかったんです。カットかけられない、いつまでもやらせてちゃ悪いからカットかけなきゃと思ってるんだけど、見入ってしまった。
森下   芝居を越えていました。あのシーンは特殊な空気感ですね。
福間   僕はせっかちだからどんどん撮るけど、途中でなにかトラブルがあって待たなければならない時間ができたりする。役者にとっては、その待つ時間がよかったりもする。
森下   でも、パンフにも書いたことだけど、男性をののしるほどの夫婦喧嘩って、怖いなと。男性は弱いから、傷ついて心がバキバキに折れてしまったら、本当に死んじゃいそうで。ああ、それから、冒頭の方で宮本が謎の男女に襲われてお金をとられるところ、あれは不意打ちみたいにびっくりしました。
福間   あそこはね、現実でないような存在のミクが、いきなり登場しました、こんにちは、それはないだろうということで、襲われる、助けるというのを考えたんです。
森下   ミクのセリフが、詩を読んでるようなのに、いきなりズバッと現実的になるのは面白い。「18万円取り返した」って言うから一体何かあったの?って思うんだけど、説明がなくても別に気にならないんですよね。そういうもんか、と思わされちゃう。ミクは趣里さんでよかったと思います。趣里さんには、不思議なセリフが妙にはまってました。
福間   趣里ちゃんも芝居をやってるけど、安藤朋子さんも元々転形劇場の人。二人のおかげで、演技への考え方が広がった気がします。
森下   この映画の世界観に合ってると思いましたよ。
福間   くるみちゃんも福間組に来てほしいって思ってるんだけど。
森下   わたしはセリフが棒読みなので……。
福間   上手い、下手ではないんだよね。その人がちゃんと出るようにすればいいんだよね。
森下   勇気づけられますね。上手い下手にとらわれないって、大きいから。
福間   そうなんだよね。流暢にセリフを言うから上手いではない。
森下   そうそう、「上手いからダメ」もある。
福間   監督にもある。いきなりカッコいいで始まってそれだけ、みたいな。
森下   そういう映画、たくさんあります(笑)。
福間   くるみちゃんは文章も書く表現者であるわけだけど、近況をどうぞ。
森下   いま育児と仕事半々ですが、12月後半に電子書籍を2冊出す予定です。
福間   いま出てる『虫食いの家(うち)』、すごくいいよね。くるみちゃんは、最近文章がすごくよくなってると思う。
『秋の理由』は今日から3週目、最終週に入りました。もしこの映画を気に入ったら、どうかまわりの方に薦めてください。そしてもう一度観てもらえたらうれしいです。
皆さん、今日は、ありがとうございました。
トークの時間はあっという間にすぎていきます。結婚された森下さんに、この村岡夫婦はどんなふうに映ったのだろうとか、尋ねてみてほしかったですね。そう思われた方は、パンフレットの森下さんの「美しい秋」をぜひ読んでください。あたらしい人生を始めた森下さんのいまが伝わる『秋の理由』評です。
森下さん、ありがとうございました。
イベントレポート 7:森下くるみさん・福間健二監督
宣伝スタッフ どんぐり
イベントレポート 6
平田俊子さん・福間健二監督
11月11日金曜日、冷たい雨の一日でしたが、K’s cinemaは、秋の光のようにあたたかでした。はい、それもそのはず、今日のゲストは平田俊子さん。詩人・劇作家・小説家と、幅広い表現の場で多くのファンを持つ平田さん。最近では編著『詩、ってなに?』が話題です。『秋の理由』を「試写会で観たあと映画館で観てシナリオも読みました。準備万端」とツイートした平田さんと、図々しくも「平田俊子のことはぼくが一番わかっている」とツイートした福間監督。今日はバトルです!
平田   とても気持ちのよい秋の映画ですね。木の葉や空や空気に秋の気配があって、人の表情も秋のものです。秋という季節そのものの映画。地面や雑踏や空の映像がたっぷりあることで映画に余白ができて、映画に登場していないわたしたちもこの人たちと同じ世界に生きているんだなあという親しみを覚えました。
福間   キャスティングが決まったのが去年の10月末だから、秋、どうなる? キンモクセイ終わっちゃう、って焦りましたけどね。
平田   1週間で撮影したとのこと! びっくりしました。やればできるものなんですねえ。
福間   低予算でやるには、日数、つまり弁当代を含む人件費をいかに少なくするかが大きいからね。
平田   『秋の理由』はやはり言葉がいいですね。さすが詩人が書いたホンだなあと思います。ストーリーを進めるためにセリフが使われている映画もたくさんあるけど、この映画は違う。楔を打つように言葉が置いてある。人を立ち止まらせるような言葉というか。詩集の『秋の理由』からかなり引用してますか?
福間   そうですね、使ってます。まず、タイトルをこれでと思って、それから中の言葉も拾っていきました。
平田   『秋の理由』という詩集を出した時点では、映画にする気はなかったんですか?
福間   ぜんぜんなかった。今回は秋に撮るから、まずタイトルをもらう、と思いついたんだよね。
平田   では、この映画の根っこに詩集の『秋の理由』があった?
福間   そうでもなかったんだけど、結局は自分の得意なもの、持っているものを出さざるを得なくなるから。
平田   『急にたどりついてしまう』も詩集のタイトルですよね。映画になるタイトルとならないタイトルがあるのかな。
福間   あまり関係ない。行きづまると、何か使うって感じかな。
詩集から持ってきたものと、そうじゃないものと入りくんでるけど、この映画でいうと、こばやし食堂で「2,000円もらっていい?」「もっと取ってくださいよ」っていうようなのが、僕の詩であり、僕が一番出てるところだと思ってます。
平田   それ、どちらかというと、なくてもいいセリフですよね。重要じゃないはずなのに記憶に残ります。こばやし食堂の小林さんが少女に「すみません、じゃなくて、ありがとう、の方がいいかもね」っていうところも。「ありがとう、といいなさい」じゃなくて「ありがとう、の方がいいかもね」という柔らかさがいいんです。この言葉遣いで小林さんの人柄がわかる。
福間   僕は、日本人がほんとうは「ありがとう」のところを「すみません」って使うのがヘンだって思ってるんです。それは「ありがとう」だろうって。これ、現場で流行ってね、みんなで「ありがとう」って笑いながら言い合った。
イベントレポート 6:平田俊子さん・福間健二監督
平田   いい現場ですね。
わたしも言葉に関わっているから言葉の細かい点が気になるんですけど、4人の人物の名前のイニシャルがみんなM・M。宮本守、村岡正夫、村岡美咲、ミクは名字がないからMひとつですけど。それからY&Y編集室の矢崎さんと横山さん。どうしてかなと気になりました。そういえば、福間さんの最近の詩集は、アで始まるものが多いですよね。『青い家』『あと少しだけ』『会いたい人』など。そのへんはいかがですか?
福間   名前って困るでしょ。シナリオ用に名前のリスト作ってるんですよ。このホンのときは、共同脚本の高田くんとM・Mでいこうって決めた。アが好きなのは、アイウエオ順にならべると一番にくるから。
平田   『ああ無情』とか。(場内笑)
映画の『あるいは佐々木ユキ』もアですね。
村岡正夫という作家は、『秋の理由』という小説を書いたという設定ですが、たとえば「だれかが泣いているために秋が来たわけではないことを知った」という言葉は小説じゃなくて、詩の言葉だなって思います。でも村岡は詩人じゃなくて作家なんですよね。
福間   小説と詩がそんなにちがうのかっていつも思っている。外国では詩から始めて小説にいくという人が多くて、ちがいがあまりないような意識があると思うけど、日本では詩と小説の住み分けができているよね。平田さんは小説も書くから、なかなかきびしいものがあると思うけど。
平田   確かに。わたしのは詩と小説の間みたいなものもありますが……。村岡の作品の言葉は、どうしても詩の言葉に聞こえるんです。
福間   村岡もそれが苦しいんですよ。
平田   村岡は詩から始めたという設定なんですか。佐藤泰志さんのことを思わせますね。村岡は佐藤泰志とはちがって映画のなかで再生しますが、佐藤泰志を生き返らせたいという思いがあったんでしょうか?
福間   あそこ、佐藤泰志をやる気はなかったんです。村岡がロープをもっていく、どこへ行くのか。あの場所は、このシーンを撮影する2日前に決めたんだけど、じつは泰志が死んだ場所の近くなんです。心の底にそうしたい気持ちがあったかもしれないけど、そうするしかない、そうなった、みたいに外から引っぱられたような結果になった。佐野さんの体験、ガンで声を失ったけど生還した。なにか絵空事のように言うだけでは、佐野さんの肉体の中に感じた闇から戻ったものが出ないと思った。泰志を、佐野さんの肉体をとおして生還させるということになったのかな。
平田   そういえば『海炭市叙景』のジム・オルークの音楽、ひかえめで人の心に沿うようでよかったけど、『秋の理由』の音楽もいいですね。音楽のうるさい映画も世間にはたくさんありますが。
福間   僕は音楽入れるのあまり好きじゃないんです。今回、清岡くんにたくさん作ってもらったけど、結局はそんなに使わなかった。
平田   あの倉庫のようなシーンはどう捉えればいいんでしょうね。何だろうってモヤモヤしたものを残す不思議なシーンです。なくても成立するかもしれないけど、ああいうものを入れるのが福間健二なんじゃないかって思います。夢のような死後のような印象ですね。
福間   あのヒントは、ベオグラードでたくさんの難民の人たちを見たんだけど、同情とかよりも、そこで人が生きてるということが深く心に焼きついた。ここについては佐野さんが、村岡にとって天国みたいなところかもと考えて、白い服を彼が用意した。
平田   この映画、いいセリフがたくさんありますね。ミクが「宮本さんの手って、きれいですね」って言うと、宮本は「60歳の男の、どう動かしていいか迷ってばかりいる手だよ」。これ、モテる男にしか言えないセリフですよね。(場内笑)
福間   あれは、撮影に入ってから考えた。宮本の伊藤さん、60歳だけど若く見えるし、手が本当にきれいなんですよ。寺島さんも言ってた。それで、手のつながりを考えた。
平田   終わり近くの、宮本と美咲の手が重なったり離れたりするシーンと、「どう動かしていいか迷ってばかりいる」という言葉がうまくつながっていると思いました。
福間   手を撮っていったんです。サランラップのところ、僕は、ふつう気持ちが荒れているとラップがうまく切れないとか破れるとか考えたんですけど、寺島さんは「ちゃんと主婦やってれば、そんなことはない」と言って、それは使わずバシッと切るシーンになったんですよね。カメラの一博さんに、監督の構想簡単にくずれたなあって言われましたよ。
平田   二人の男もいいけど、男の間でしっかり生きている寺島さんが、やっぱりよかった。美咲には結婚前にどんな人生があったんだろう、どんな仕事してたんだろうって思いましたけど。
福間   登場人物の過去、いちおう考えてあるんだけど、なんだか忘れちゃったかな。(場内笑)
平田   自分を支えてくれるしっかり者の女性と、どこかに連れ出してくれそうな若くて魅力的な女性。男の願望を映画化してるようにも思えます。
福間   うん、けっこう普通に、パターンかな。村岡の頭のなかで、美咲からミクが生まれてる。でもミクを実際に存在させたことで、宮本との関係がくっきりしてくるというか。
平田   ミクの登場のしかたは詩的ですね。
福間   僕が若いときから撮りたいと思ってきたようなシーンになってる。
平田   あ、そろそろ時間ですね。もっとお話ししたいことがあるのに残念。村岡の部屋のこと、少し言わせてください。女性的なものがなぜ多いのか、不思議だったんです。男は大きい机が好きじゃないですか。男にもよるけど、村岡のような人は大きい机派だと思う。なのに小さめのライティングビューローやスタンドなのが不思議でした。亡くなった詩人の新井豊美さんの書斎をそのまま撮影に使われたと聞いて納得しました。村岡という作家とあの書斎が、響きあうような、あわないような、なんとも不思議な感じです。新井さんの書斎を見られるのは詩人にとっては興味深いです。
福間   平田さん、なにかお知らせとか。
平田   15年ぐらい前に書いた「甘い傷」という男7人の芝居が再々演されることになりました。中野の「あくとれ」という小さな劇場で12月17日から25日まで上演されます。よかったら観にいらしてください。
福間  僕は映画をやりたくてずっとやってきて、これが5本目の作品です。もっとたくさんの人に観てもらえたらっていつも思ってます。いいなと思われたら、まわりの方にすすめてください。そしてもう一度観に来てください。
詩人ふたりのトーク、これまで話題にのぼらなかった、言葉について焦点があてられて、とても興味深かったですね。平田さんのご指摘からもわかるように、福間監督の作品は詩的な言葉を日常の次元にちりばめる、ということで、個性あり、難解さもあり、なのでしょうか。でも、心地よい、もう一度観てみたい、そんな気持ちにさせるのかもしれませんね。まるで詩集をくりかえし読むように。
平田さん、どうもありがとうございました。
宣伝スタッフ どんぐり
イベントレポート 5
寺脇研さん・福間健二監督
『秋の理由』11月8日のトークゲストは寺脇研さんです。長年にわたる映画評論家としての活動に加えて、近年はプロデューサーとしても活躍中の寺脇さん。今年4月に公開されて、いまもなお各地で上映が続いている、佐野和宏監督の『バット・オンリー・ラヴ』も寺脇さんのプロデュースです。
さて今日は、佐野さんをめぐる話題が沸騰するのでしょうか?
福間   今日はスクリーンで初めてご覧になったんですよね。いかがでしたか?
寺脇   つい佐野和宏を観てしまったんですけど。佐野は今年3本も主演した。でもそんなこと誰も知らないわけですよね。3本ともちがうキャラクターで、福間さんの映画は文学的、『バット・オンリー・ラヴ』の男は煩悩、『ユメのヒト』はこれまたちがうんです。福間さんが佐野を使った理由は?
福間   佐野さんの病気がもう助からないかもしれないという噂を聞いたりして、それまで対立するところもあったんだけど、久しぶりに会ったとき、いいなあ、役者で使いたいなあと思った。男二人の友情、自分が描ける60歳の男。いろいろな男が浮かんだけど、自分が描けるのは作家かなと。佐藤泰志のことも書いたあとだったし。死から戻った表現者である佐野さんを思い描いたんです。そして声の出ない作家と。
寺脇   佐野と伊藤洋三郎さん、この両方のコンビネーションがよかったね。
福間   佐野ちん(またこの呼び方が出てきました!)ぐらい強烈な個性だと、相手はあっさり普通でなきゃ。伊藤さんの『恋』を見て、その普通さをやってくれると思った。
寺脇   佐野が先に決まったの?
福間   佐野ちんは早くに決まっていて、11月インが決まり、伊藤さんは10月末ギリギリだったんです。その直前に趣里ちゃんと寺島さんもバタバタっと決まった。
寺脇   佐野と飲んでて話したことだけど「寺島さんとやれたのがよかった」と言ってた。
福間   佐野ちんはどこか子どもっぽいところがあって、人と張りあうというか、オレもやるぞ、オレの方が、ってとこがあってね。
寺脇   監督としての佐野は、監督同士のライバル意識がつよい方だからね。
福間   イン前の打ち入りでみんなで飲んだとき、佐野ちんは「福間さん、倒れてください。あと僕がやりますから」なんて言ってました。(場内笑)
寺脇   そういう野心の持ち主だよね。
福間   佐野ちんに、ほどほどじゃなくて福間ワールドを壊してくれって言ったんだけど、ここまでやってくれるか、というぐらいにやってくれた。役者としてやはりすごいですよ。
イベントレポート 5:寺脇研さん・福間健二監督
寺脇   大高宏雄と、今年は佐野の年だって話したんですよ。宣伝させてもらいますが、今回初めて佐野を見て、いいと思った人は『バット・オンリー・ラヴ』をぜひ観てください。もうすぐポレポレでも八王子でもやるから。『秋の理由』の佐野とはちがう。佐野も福間さんも作家性の監督だけど、ぜんぜん違うよね。
福間   ひとりの人間として観てもらうっていうかね。大ヒットしてる『シンゴジラ』とかのメジャーの作品って、誰がつくってるのかなんて見えないし関係ないですよね。
寺脇   メジャーは、ベルトコンベアに乗せて流すだけだけど、自主映画は行商人のようにやってるわけですよ。新潟や鹿児島に、どうぞお願いしますって行くわけですよ。日本映画の構造、観客百万単位でやってるような『シンゴジラ』なんかに比べると、自主映画はカス(滓)みたいなもので『バット・オンリー・ラヴ』は2千人、3千人。それでも人との間にコミュニケーションつくっている。どんな田舎でも上映のときは誰かが行く。人に何かを伝えたい、反応を見たいと思ってね。そうじゃなきゃやれないですよ。
福間   詩集も同じです。100部売れたとしていくらで作るか、などと効率を考えるのが好きですけど、本当はそんなことではなくて、ひとりの読者と出会えることが大きい。
ところで、寺脇さんはなぜプロデューサーをやろうと思ったんですか?
寺脇   最初にやったのは『戦争と一人の女』ですけど。批評書いたりして、観る側にいる人間として、こんな映画しかないのって気持ちになって、どんどん観るものが狭くなっていくんですよ。自分の観たい映画がない。じゃあ自分で作れば、と思ったわけです。佐野は、5年前にガンをやったけど、18年前からホサレていたわけですよ。じゃあ自分がやろうかと。
福間   佐野ちんも僕も映画を撮ることが一番楽しいことなんですよ。やってみるとやめられない。
寺脇   佐野はスネて、撮れなくていい、こんな腐った日本の映画界で撮らなくていいなんて言ってたんですよ。
福間   そんなことで済むはずはない。
寺脇   メジャーの映画なんか、出資したプロデューサー10人ぐらいが現場に見張りにきているわけですよ。それじゃあ作りたいものなんか作れないですよ。
かかった費用ぐらいがふつうに戻れば、つまり自転車操業ですけど、トントンに返ったらまた作ろうってのがいいわけだけど、そうはいかないのが現実で。
佐野は次の映画、もっと金のかかる映画を考えてるもんだから、何考えてんだよって言ったんですよ。
福間   昔と何が違うのか。ふつうに売れるものがないんですよね。この社会の構造が、ものすごく売れるか、売れないものは売れない、となっている。自分が見つけて、という回路がない。
寺脇   人が観てないものを観る。みんなが観るというものではないもの。全国で2千3千人のなかのひとり。これは貴重な体験ですよ。
福間   自分でみつけてないですよね。映画も文学も芸術すべてにおいて。大きな映画祭で賞とったからといって、それがいいとしてしまう。
寺脇   日本はなさけないですよ。カンヌでヴェネチアでよかったのがいいって言ってちゃあダメ。バラエティ番組なんかで映画紹介してるでしょ。ネタバレになるからここから先は、なんて言ってることが、見に行かなきゃいけないという気持ちにさせて、行くわけですよ。自分でみつけて行ってない。
福間   でも、ポジティブに考えたいです。たとえば、地方には古い映画館がまだ残っていて、ひとりで上映からモギリまですべてをやって、頑張ってるところもあるんですよね。
寺脇   そう地方には、ほんとにほそぼそだけど、そういう劇場がある。映画文化の下支えですよ。
映画館の利益しか考えない映画の作られ方は、監督も脚本家も使い捨てですよ。原作があって、これ撮れよ、ってね。どんどんテレビ局みたいになっていく。
福間   そんなんじゃないことをやるのが、自主映画なんですよ。
寺脇   佐野は最後の作品、なんて言ってるけど、やりつづけるしかないですね!
今日のトークは、さすが寺脇研プロデューサー! というわけで、佐野和宏からいまの日本の映画の状況、そして自主映画の展望に終始しましたね。具体的な数が出たところで、うなずいたりため息をついてるお客さんもいました。
自主映画の現実はきびしい。しかし、ひとりひとりに伝えていきたい。その思いは場内に熱く届いたことと思います。
寺脇さん、そして最後まで聞いてくださった皆さん、ありがとうございました。
宣伝スタッフ どんぐり
イベントレポート 4
安部智凛さん・正木佐和さん・福間健二監督
『秋の理由』は上映2週目に入りました。4回目のトークとなる今日11月5日は、安部智凛さんと正木佐和さんがゲストです。本作で、主人公宮本が経営していた黙示書房の一角にある「編集プロダクション Y&Y」で働く女性です。「宮本さんのファン」の矢崎を安部智凛さんが、Y&Yの代表横山を正木さんが演じました。安部智凛さんは2005年に映画デビュー、数多くの作品で活躍中ですが、故若松孝二監督の晩年の4作品に出演しています。正木佐和さんは舞台から出発して映画へと進み、2011年のいまおかしんじ監督『UNDERWATER LOVE おんなの河童』で、アメリカ・ファンタスティック映画祭で、ベストアクトレス賞を受賞しています。
女優としてのキャリアを着実に重ねてきているお二人と福間健二監督。さて、どんな話が展開されたのでしょう。
安部   トークなどではいつも笑わせようとあれこれ考えてくるのですが、映画が映画なのでそれもどうかと思いつつ……でもいちおうネタは考えてきています。
正木   横山役の正木佐和です。いちおう大阪人としては、ネタは仕込まねばというわけで、用意はしてきています(笑)。
福間   僕は役者の地が出たらいいと思っていて、トモリちゃんとサワちゃんの地はわかってるつもりでいるので、二人にお願いしました。
正木   この映画にも、道で言い合いをする役で出ているサトウトシキ監督の『青二才』のトークのときに福間監督が来て、それから『あるいは佐々木ユキ』を観て、福間監督の世界に入ってみたいと思ってました。で、今回のことになって、すごくうれしかったです。わたしたちの撮影は1日だけで1時間ぐらいだったんですが、撮影の鈴木一博さんは速いんですよね。もうちょっといたいと……。
福間   弁当挟んでたよね? ほんと、一博さんは速いし、ぼくも速い。
正木   ロケ場所は本物の出版社だから、すごくリアリティがあって、校正用の赤鉛筆が机の上にあったりして、ほかのディテールもよかったんです。
イベントレポート 4:安部智凛さん・正木佐和さん・福間健二監督
福間   トモリちゃんの新宿歩き、イン前にやったけど、どうでした?
安部   2時間ぐらい撮りましたよね。横断歩道の真ん中で止まってたとこ、カットされましたよね。あんなところに止まってて、まわりの人に邪魔だなみたいにへんな顔されたんですが、カットされたんです。(場内笑)
福間   1時間ぐらいじゃなかった?
安部   いえ、2時間です。(場内笑)
福間   11月はすぐ暗くなるから、夜として撮れるんだよね。
この映画は、3.11の震災以降に初めて撮った作品なんで、久しぶりだったから、新宿での撮影は練習でもあった。町にいる人、秋にいる人、そしてトモリちゃんがそこにいるという。
長い編集作業のなかで、二人が出てくるところが楽しかった。サワちゃんの笑顔と、トモリちゃんの不思議な感じで、よかった。なんかハリウッドや東宝映画のようなね。
正木   初号試写のとき、自分たちが出てくると、なんだかほっとしたんです。
安部   伊藤さん、あのシーンが一番緊張したって言ってましたよ。
正木   伊藤さんはいつも、そんな役をやってないですもんね。
福間   宮本は、みんなと会っているよね。伊藤さんを発見した朝は、興奮した。
正木   「伊藤さんを発見した朝」。詩みたいですね。発見されたいですよね!
福間   もちろん、二人にも出会えた。現場はどうでしたか?
正木   あったかかった! 「小林食堂」のような、おいしくて。ロケ弁、すてきなお弁当だったんです! 秋の味がいろいろ入ってる秋のお弁当で、ほんとにおいしかった!
福間   あの日は、撮影させてもらった五柳書院の小川さんが、弁当も用意してくれていた。楽しいなあ、女優さんがいて、夢に見ている現場だなあって。でもあのあと、夜の撮影があったからちょっと心配だったけどね。
正木   トシキさんも同じ日でしたよね。トシキさんと監督助手の花示丸君がケンカするその前を歩いてるのが、五柳書院の小川さんですよね。
安部   食堂シーンに、監督が3人もいて、瀬々さんといまおかさんと木村文洋さんと。あそこの瀬々さんが、むせて咳こんだのは文洋さんの声に笑ってむせたそうなんですけど、そうすると、いまおかさんも何か言わなきゃみたいに「ここ、水来てないけど」なんて言ったりして……。(場内笑)
福間   今日はそろそろ時間ですね。
正木   (手を見せて)今日は手にメモしてきたんです。
ろくでもないことばかり起こるけど、「この世界はいい匂いがする」。
この映画は、パンフレットもすてきで充実してます。
安部   今日は、気の利いたことが言えず、どうもすみません。パンフレットのこの言葉が好きです。「だれかが泣いているために 秋が来たわけではないことを知った」。
イベントレポート 4:安部智凛さん・正木佐和さん・福間健二監督
福間   この映画は、画と音と役者に恵まれて、いい作品になっていると思っています。何度でも観てもらいたいです。リピーター割引もあります。どうぞ応援してください。今日はありがとうございました。
打ち合わせでは、監督は二人にまかせるからと言っていたのに、福間監督、例によってけっこう話してましたね。でもそれを上回って、正木さんの明るい笑顔と安部さんのうつむき不思議さが、観客の方に受けていました!
いらしてくださった皆さん、安部さん、正木さん、ありがとうございました。
宣伝スタッフ どんぐり
イベントレポート 3
伊藤洋三郎さん・福間健二監督
11月4日金曜日。『秋の理由』上映第1週目最後の今日は、本作主演の伊藤洋三郎をお迎えしてのトークです。伊藤さんのインタビューは、あちこちのメディアに掲載されているので、ご存知の方も多いと思いますが、故松田優作との出会いがきっかけで、伊藤さんは俳優の道に入りました。そこから30年あまり。ときにはさりげなく、ときには強烈に味のある役を演じながら「60歳の伊藤洋三郎」をみずから育ててきたという印象を受けます。人は、生きてきた時間が、姿や顔に見えているものですね。
さて、トークは福間監督の問いかけから始まりました。
福間   伊藤さんは『秋の理由』観たのは、今日で2回目ですよね。どうでしたか?
伊藤   今日は落ち着いて観ることができました。みんなに言われて、先入観持ってたけど、あらためて観て、わかりやすい映画だなと思いましたね。外の音、町の音などの環境音がすごくいい感じで入ってますね。
福間   K’s cinemaは音もすごくいいんですよね。
伊藤   実際の音以外も使ってますか?
福間   同録で採った音でも、距離感などを変えたりして。録音の小川さんは、去年『恋人たち』で毎日映画コンクール賞をとった人ですけど、いろんなアイデアを出してくれるんです。でも10個のアイデアのうちふたつしか使ってなかったりもするんですけど。僕の映画は、キャストもスタッフもみんながアイデアを出してくれるんです。
伊藤   劇場で観ると細かいところが見えてくるんですよ。村岡が公園で子どもを連れたお母さんたちに筆談器を必死で見せているけど、何を書いたのかとか、やっちゃんがどんぐりの入った箱を渡すけど、あのラッピングはおばあちゃんが作ったのかなとかね。
福間   あの村岡のところは、僕も知らないです。僕がわかっているのも、ヘンな話ではありますよね。役者さんと、そうは打ち合わせしてないですね。
伊藤   僕は1回だけ大島渚監督の作品に出たことがあるんですけど、あの人は本番1回だけなんですよ。やったことがすべて、それが真実なんだからと。福間監督もそうだけど、そういうところ、潔いですよね。
福間   映画はまあふつう順撮りではないので、今回も最後を先に撮らなければならなかった。無精髭の伊藤さんを先に撮ってから、髭を剃ってもらうというね。
伊藤   まあ、嘘ついてるよなあって。初日に撮った川べりのラストのシーン、そういうところで、監督が現場の空気を作るんですよね、無言のなにかを。それが監督というものだと思いますね。
福間   大島さんではないけど、僕は役者が地で持っているものを出すことが大事だと思っている。今回宮本役が決まらなくて、ギリギリで伊藤さんに決まったけど、とてもうれしかったです。
イベントレポート 3:伊藤洋三郎さん・福間健二監督
伊藤   「映画芸術」のインタビューでも話していることですが、僕は映画の雑誌を30年くらい読んでなかったんです。1年前、新宿の酒場のママさんがたまたま僕に「映画芸術」をくれたんですね。沖島勲特集だったんですけど、福間健二さんや荒井晴彦さんの記事があった。その翌日ぐらいにオファーがあって、台本送ってもらって見たら、福間健二監督だった。こんな不思議なことがあるんだ、ってすぐにお会いして受けたんですよ。
福間   僕は、伊藤さん主演の『恋』の予告篇見て、あっ、これだ、宮本はこの人だって思ったんです。
伊藤   おだてられるとすぐ調子に乗るんです。
福間   伊藤さんはいいって、まわりからも言われたんですよ。
ただ宮本は、他の3人の個性に対して、ある意味普通の人というか、何をやったらいいのか、やりにくいわけでもあって、そのまま立っていてくださいなんてお願いしたりして。
伊藤   電車の中や町で観察したんですよ。普通の人、どこにでもいるような人、その主観について。目立たないなんでもない人でいいのかと。それは僕の地に近い。でも、役者は何者かになって表現したいので、「宮本、なにぐずぐずしてんだ、こいつ」とか思ったりして、むずかしいとは思いました。
福間   鈴木一博カメラマンと言ったのですが、撮ったときの顔が、伊藤さんはキマるんですよね。昔で言えば佐田啓二のような、芝居がうまいというよりも顔がキマる人なんだと。寺島さんを待ってるときの顔とかもね。
伊藤   寺島さんの車に乗って後ろから撮ってるところから、手のシーンに至るところ、ヨーロッパの映画みたいですよね。昔の松竹の映画を思い出しましたよ。
福間   あの夜の闇をどうやったら出せるのか。フィルムの場合は光と影、デジタルの闇は濃いグレーでしかない。ここでは、ただ暗いではなく本当の黒が生きているんです。一博さんはすごいです。伊藤さん、佐野さんふくめて、スタッフ・キャスト、みんなすごいなあって、現場でいつも思ってました。
伊藤   僕は食べものが出る映画はみんな好きなんです。食べもの、おいしかったなあ。監督の身内の方が作ってくれたそうで……あ、ネタバレしてないですよね? あたたかさが伝われば、食べててもいい画だなあって思うんです。
福間   ところで、僕は撮り終わって、編集に延々時間をかけているとき、落ちこむんです。撮影はすっきりいけた、でも落ちこむことが多い。
伊藤   そうなんですか? 僕は福間監督がこんなに段取りのいい人だとは思ってなかった。詩を書く人だから、時間にはだらしないんじゃないかと。ところが、段取りも準備も早いし、迷わないし、すごくラクだった。
福間   現場はパッパッといきたいんです。
伊藤   準備できてないとき、イライラしてましたね。
福間   撮影してるときは興奮してて、朝早く目がさめて、みんなが来るのを待ってるような状態なんです。
伊藤   ときどき鼻息が伝わってきて、監督興奮してる、いいんだなと。雰囲気よくて、やりやすかったです。表情のない監督いますからね。
映画って、人物が出てきて途中で出なくなって、どうなったのかなって思うことあるけど、この映画はちゃんとそれを追っていますよね。
福間   その人が自分にとってのベストを出してくれたら、もう最高ですね。 あれ、もう時間ですね。伊藤さん、皆さんにどうぞ何か。
伊藤   何か言いたいことがあったら、ロビーで声かけてください。秋の行事の多いときに、ほんとうにありがとうございました。
イベントレポート 3:伊藤洋三郎さん・福間健二監督
伊藤さんの、長い役者人生が伝わるお話に、客席には熱心に聞き入る空気が流れていました。 若くてカッコいい伊藤さん、どうもありがとうございました!
宣伝スタッフ どんぐり
イベントレポート 2
佐野和宏さん・福間健二監督
東京じゅうに秋の青い空が広がった11月3日、文化の日。 『秋の理由』トークイベント第2弾のゲストは、佐野和宏さん。本作で「書けなくなった作家」村岡を演じて、俳優としての底力を画面に見せつけています。佐野さんは、俳優として映画の世界にデビューし、その後、自主映画やピンク映画を脚本・監督・主演しながら活躍してきました。
劇中の村岡は、精神的な不調から声が出なくなっているのですが、演じた佐野さんは実際に5年前に受けた咽頭がんの手術で声帯を失いました。
今日のトークでは、筆談器に書かれた佐野さんの言葉の読み上げを、「カーテンを開ける看護師」役として出演した川島加奈代さんにお願いしました。
さて、トークは、監督が川島さんの紹介をするところから始まりました。
福間   村岡の病室のシーン、カーテンを開ける看護師さんがいた方がいいだろうということになって、急きょ川島さんにお願いしました。川島さんは『あるいは佐々木ユキ』に出てもらったんです。後ろ姿と手の出演なんですが、佐野さんの意見で声も入った方がいいとなり、「失礼します」という声を入れました。だよね?
佐野   (俺が言った? と首をかしげるしぐさ)
福間   これが撮影初日の最初のシーンだったんだよね。物語では最後なんだけど。
佐野   やりにくかった、かも……。やり直したい!
福間   これは、佐野さんの実際の体験を聞いて、台本に書き加えたところ。このシーン、最初だったから、テイク4回ぐらい撮ったかな。その前の、寺島さんがゆっくり動くところとかもね。
佐野   監督、寺島さんをヘンな動かし方してるなあと思ってた。
福間   僕より佐野さんの方がうまい。寺島さんも心配そうだった……。
佐野   だと思いますよ。
福間   消え方、を考えてああしたんだけど……。
佐野   役者は、フレームから切れてとかじゃなくて、何のためにそうやって動くのか。
福間   佐野ちん(このあたりから監督は、普段呼んでいる「佐野ちん」になってきました)の僕への不満、カメラの鈴木一博もだけど。ぼくは画を撮りにいく、画としてよければと思ってしまう。芝居的にどうなのかよりも。カット割りもあまりしたくないし。
佐野   甘いですね。(場内笑)
イベントレポート 2:佐野和宏さん・福間健二監督
福間   佐野ちんは、僕が甘えてるって、いつも思ってるんじゃない?
佐野ちん、って呼んでいい?
佐野   言っていいですよ。
福間   佐野ちんとは、出会ってからもう長いけど、『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』のときの4人それぞれへのインタヴューのなかで、佐野ちんが一番緊張感があった。
そして今回の撮影で、佐野ちんの演技と集中力のすごさに圧倒された。
佐野   やっとわかりましたか。(場内笑)
福間   こんないい佐野ちん、見たことない。男的に惚れたというか。
今回3人の男、伊藤・佐野・木村の、男の顔をどう撮るかって考えていたんだけど、みんないい顔が撮れた。寺島さんとのケンカのシーンのあとの佐野ちん、カットかけたら抱きつきたいほど感動してた。
佐野   目醒めました?
福間   寺島・佐野のあのぶつかりあい、佐野(村岡)も負けてないと思うけど、佐野ちんは村岡よりも強いタイプ?
佐野   あの部分もかなりありますよ。
福間   あのシーンは、カット割りしたってしょうがない、ほんとうにやりました! カットかけたくなかった。
佐野   カットがかからないから。
心の中では、いいかげんにして!(場内笑)
福間   現場では感動の連続だった。演技陣にめぐまれたから、悩まなかった。でも現場というのは、段取りがうまくいってなかったりして、予定以上に待つ時間があったりする。でもそれこそが役者がそのシーンに向かう時間で、役に入りこませていくと思う。
佐野ちんが夜を歩き、次の朝を迎えるところ、あれは実際に撮影最終日の前の夜と最終日の朝の30分なんですが、佐野ちんは夜の撮影が終わってずっと呑んで翌朝の撮影に入って、それが終わってまた呑んで、と呑み続けだったんですよ。もちろんスタッフも飲みましたけど。(場内笑)
イベントレポート 2:佐野和宏さん・福間健二監督
福間   今年主演作3本が公開されたけど、どうですか?
佐野   なんでしょうね……。18年間の何かが一気に吹きだした感じ。
もう終わりですよ。
福間   いや、ここからまた佐野が始まっていく。
佐野   そうそう声の出ない役なんてないですよ。
福間   役者もやっていくんですか?
佐野   話があれば。
福間   主演・監督での役者も見たい。
佐野   いっぱいあります。
福間   人のホンで撮る気はないの?
佐野   自分ので精一杯。書いてはほしいですけど。
福間   人に書いてもらう気持ちあるんだ!?
佐野   僕の撮りたいものなら。
次回作にお金出してください!
福間   佐野ちんは、昔から監督で役者で、独自の世界をつくってきた。どういう感じの人かというと、チャップリンとかピエトロ・ジェルミとかね。佐野ちんは古典的な名作を撮れる人だよね。
(客席にむかって)皆さんのまわりに、お金出してくれそうな人いたら、よろしく!
そろそろ時間なので、佐野ちん、お客さんにひとこと。
佐野   そうですね。こういう映画はマンツーマンで伝えないといけない映画。もし何かを感じたら、たくさんの人に教えてあげてください。
大きな拍手を受けて、佐野和宏さんと福間監督のトークは終了しました。
撮影のときの感動がいまも続いている福間監督と、それに対してクールでシニカルな言葉を返す佐野さんとのトークは、とても刺激的でしたね!
貴重なトークに参加くださったみなさま、ありがとうございました。
どうぞ、ひきつづき『秋の理由』を応援してください。
宣伝スタッフ どんぐり
イベントレポート 1
明智惠子さん・福間健二監督
11月1日水曜日、『秋の理由』初めてのトークイベントは、明智惠子さんに登壇いただきました。明智さんは、「キネマ旬報」の編集長を9年間つとめられたのち、今年7月から同社のエグゼクティヴ・エディターとして活躍されています。『岡山の娘』(2008)からの福間作品を、ずっと応援してくださってきました。ここまでの人生を映画とともに歩んできた明智さんと福間監督のトーク。福間監督の長年の念願がかなったトークでもあります。
まずは、明智さんの監督への質問から始まりました。
明智   ここまでずっと福間さんの作品を観せてもらってきたけれど、『秋の理由』には今までとちがう色が加わったような印象を受けました。この作品には、物語のなかに描かれなかった時間や気配を出す力がある。自分の記憶ではないのに、自分の記憶として呼びおこす力がある。それって、何からくるのでしょうか。
福間   今回はシナリオに時間をかけたんです。それぞれのシーンで、そこにいる人間が生きているかどうかということを意識しながらつくっていった。だからといって、いいシナリオということではない。フレームの中はカメラマンの鈴木一博さんにまかせている。外と中で起こっていることがちゃんとつながることを考えました。
明智   描かれなかった時間や、人物たちの過去、映っていない時間など、フレームの外の空気も動いているんですよね。物語に対して、多くの映画は、人物や音や音楽などが映画に準じるために存在していて、それは映画として当たり前なのかもしれないけれど、規定のもので完結するという傾向があります。福間さんの映画はそれとちがうところにいっている。外側の空気も動いているし、監督のまなざしも外側にあったように感じました。
福間   現場で役者が一番生きるのはなんだろうっていつも思ってるんです。今回はコンテっぽいものも考えていたけど、現場では忘れてる。一博さんともけっこうしっかり打ち合わせしたけど、そのとおりにいってない。役者それぞれが「生きている」カットが撮れたとき、抱きしめたいくらいに役者に愛を感じてるんですよ。
明智   現場で台本見てるんですか?
福間   ほとんど見てないですね。趣里ちゃんのミクが「エンピツになるってことは…」というところ、僕がもうすこしやさしく言った方がいいかなって言ったんですよ。そしたら趣里ちゃんに、台本には「鋭く」って書いてあるんですけど……って言われたりね(笑)。
キャスティングに恵まれたと思います。
イベントレポート 1:明智惠子さん・福間健二監督
明智   福間さんは、詩人としても評論家としても高名なかたで、言葉も映画も知りつくしているわけですけど、それらの仕事はひとりでやることですよね。ひとりでやることが好きなのかなと思っていたんです。そしたらある発言で「みんなでやりたいんだ」とあって、これがとても新鮮でした。書くことを、ひとり孤独にやってきている福間さんが、どうして映画づくりに惹かれているのでしょうか。
福間   僕はね、詩も、自分の中から生み出すだけではない方がいいように思うんですよ。他者(見えない相手)との会話のようになった方がいいのではないかと。映画は相手が見えていますよね。僕は、表現者としては人が好きなタイプだと思う。自分が、越えたい、未知へ踏みだしたいと思っていることは、人との間で出てくるんじゃないかと。人との間に生まれるものに興奮します。今回も、そういうときのこと、おぼえていなかったりするんですけど。ちゃんと監督助手がおぼえてくれてるんですよね。
明智   興奮しながら、楽しみながら、というのは映画に出ていると思います。フレームの外、幻視みたいに。今回3回観たんですけど、3回目にストンと腑に落ちたことは、せつない三角関係、通俗的ではない三角関係、ということだったんですけど、そこにシンプルな感動をおぼえました。3回観て、そのたびに見え方がちがうんですよね。もちろん、佐野さんは一貫してすごいですけど。
福間   村岡(佐野さん)のロープのシーンを撮ったとき、こういうことが映画なのだ! 闇こそが映画なのだと思った。美咲も宮本も闇に行かねばならないと思ったので、二人が車に乗って走るところをできるだけ黒い闇にした。そしてミクは船倉の「闇」。でも監督は、闇までいって、そこから彼らを生の側に呼び戻す。
明智   いちばん率直な映画なのかもしれませんね。
さて、そろそろ時間です。
明智さんはさすがに、相手の核心を引き出すことに長けています。聞いている観客の皆さんは真剣です。
福間   映画もまた出会いです。闇のなかで出会う。映画と皆さんの間に生きられることを大切にしたいです。今日はありがとうございました。
明智   あ、わたしも最後にひとこと。『秋の理由』は観るたびにちがうものが出てくる映画です。皆さん、ぜひまた観に来てください。
明智惠子さんと福間監督の、中身の濃いトークは、熱い拍手を受けて終了しました。
いらしてくださった皆さま、どうもありがとうございました。
映画の日の今日は、パンフレットを買い求める方がたくさんいて、福間監督はうれしそうにサインに応じていました。
宣伝スタッフ どんぐり